那須雪崩事故を受けて栃木県教育委員会が策定している再発防止策は不明な点が多く、未だに方針も実施状況も明らかになっていないものがほとんどです。内容の説明も、7月5日に開催された説明会で説明されたものが唯一です。
そのため、再発防止策の方針や実施状況を明らかにするために、遺族・被害者の会より質問書を提出して栃木県教育委員会とやり取りをしています。
質問の内容は「組織体制」や「説明会の開催」や「処分規定」についてなど、12項目にわたるものになっています。(12項目の内容はこちら)
8月10日に1度目の質問書を、11月12日に2度目の質問書を教育委員会に提出いたしました。2度目の質問書は現在回答待ちの状態です。
回答は心無いものが多く、まだまだ再発防止策の意図を理解するには程遠いです。しかし、栃木県教育委員会の再発防止に対する考え方や意図がわかるまで質問を繰り返すつもりです。
そのやりとりの内容を項目ごとに何度かに分けて投稿させていただきます。
今回は「雪上での活動・訓練について」の質問とその回答のやり取りを投稿いたします。
回答から感じること
重要な議論を省略し、拙速に結論を出そうとする栃木県教育委員会の姿勢には疑問を感じます。それでも結果として「雪上活動禁止」という結論は妥当です。
拙速に結論を出す栃木県教育委員会の姿勢を改めない限り栃木県下の学校で雪上活動をすべきではありません。
雪上活動禁止という結論に至った登山計画審査課の場で、「雪崩事故を受け、現場の教員は雪上訓練にナーバスになっており、現状で認めることはできない。」とのコメントがありました。これは今後の雪上活動再開に含みを残そうとわざと残したコメントに感じられます。教員がナーバスでなくなったらなんの制度設計もないまま雪上での講習会を再開していまうつもりなのでしょうか。
「教員がナーバスになっている」からではなく、なんの制度設計もなく雪上活動の議論を始めてしまう栃木県教育委員会が問題であると考えます。
質問 X.雪上での活動・訓練について
質問-45 雪上活動の意義について
「認める余地があるかどうか」という言い方をされているので、県教委はすでに雪上活動を実施する意義はあると判断され、登山計画審査会には技術的に認める余地があるかどうかのみ判断を求めていると読み取れます。
学校もしくは文科省管理下の雪上講習で重大事故が繰り返し発生している現状で、登山の素人であるはずの栃木県教育委員会がそれでもなお学校管理下での部活動での雪上活動には意義があるとする理由はなんでしょうか。
教育委員会
教育委員会
教育委員会
教育委員会
登山計画審査会の会長は雪上訓練を認めない方針を受けて以下のようにコメントされています。
「雪崩事故を受け、現場の教員は雪上訓練にナーバスになっており、現状で認めることはできない。」
雪上訓練を学校教育活動において認めないのは「教員がナーバスになっている」からでしょうか。栃木県教育委員会として、雪上訓練を認めないことに対してそれ以外に理由があるのであれば教えてください。
教育委員会
(2018.12.14回答要望)
年月が経過し、教員がナーバスではなくなるとすれば、雪上活動を再開する可能性はあるのでしょうか。
栃木県教育委員会としてのお考えを教えてください。
教育委員会
(2018.12.14回答要望)
質問-46 登山計画審査会での議論について
なぜ登山計画を審査する場であるはずの登山計画審査会で雪上活動を認めるかどうかの議論ができるのでしょうか。理由と根拠を教えてください。
登山計画審査会で審査できるのは決めたルートを守り、規則をきちんと守ることを前提にその登山が安全であるかどうかを審査するだけです。規則を守るための制度設計も明確でない中、登山計画審査会で雪上活動の議論ができる訳がないと考えます。
教育委員会
回答が不十分なため、再度質問します。
なぜ登山計画を審査する場であるはずの登山計画審査会で雪上活動を認めるかどうかの議論ができるのでしょうか。
理由と根拠を教えてください。
教育委員会
(2018.12.14回答要望)
質問-47 積雪はあるものの比較的平坦な場所の定義について
「積雪はあるものの比較的平坦な場所」の明確な定義を教えてください。
教育委員会
質問-48 雪上活動の制度設計について
「積雪はあるものの比較的平坦な場所」以外の危険な斜面で活動を行わないための制度設計をどのようにお考えなのか教えてください。
教育委員会
質問-49 罰則規定について
制度設計に背いて危険な斜面に生徒らを誘導し、事故に至った場合の罰則規定を教えてください。
教育委員会
質問-50 講師の選定基準について
もし雪上での訓練を実施する場合の引率や講師の選定基準をどう考えているのか教えてください。
教育委員会
雪上に限らず、部活動に於いて今後登山に関する講習会を実施する際の講師の選定基準を教えてください。
教育委員会
(2018.12.14回答要望)
質問-51 民間の講習会ではダメな理由について
なぜ民間で実施されている講習会に個別に参加ではダメなのか教えてください。
教育委員会
生徒が民間の登山団体などに参加して個人的に行うことは認めたとありますが、部活動として民間の講習会には参加しないということでしょうか。
教育委員会
(2018.12.14回答要望)
質問-52 講習会の主催者と実施規定の基準について
雪上に限らず栃木県下の高校山岳部で、今後部活動が主体となって行う講習会の主催者や講師の選定など実施規定の考え方や基準を教えてください。
教育委員会
高体連が主催し、顧問教諭が講師となった講習会でこのような凄惨な事故を引き起こしています。
それでも県教委から講師の選定基準を示すつもりはないのでしょうか。
教育委員会
(2018.12.14回答要望)
今後の高体連主催の講習会で顧問教諭が講師となることを許容するつもりでしょうか。許容できるとするならその根拠を教えてください。
教育委員会
(2018.12.14回答要望)
回答に対する意見 X.雪上での活動・訓練について
妥当な判断
栃木県教育委員会は、県立高の登山計画を事前にチェックする登山計画審査会の場で、県立高の山での雪上活動を全面的に禁止する方針を示されました。
決定までの経緯に疑問は残りますが、妥当な判断だと思います。
重要な項目の議論がないまま
決定までの経緯についても質問いたしましたが、「今後の講習会の在り方」「講習会の制度設計」「講師の選定基準」「雪上訓練を行う場所の定義」といった雪上訓練を議論するために重要となる項目について全く議論もないまま雪上訓練の是非が議論されていたことが今回の回答から明確になりました。
検証委員会の報告書においては、「講習会等の実施に対する準備とチェック」の必要性について述べられており、それらの基準が設けられていない現状に於いて雪上活動について議論をすること自体時期尚早であったと考えます。
拙速な姿勢ではなにもできない
重要な議論を省略し、拙速に結論を出そうとする栃木県教育委員会の姿勢には疑問を感じます。そういった点から「雪上活動禁止」という結論は妥当であり、拙速に結論を出す栃木県教育委員会の姿勢を改めない限り栃木県下の学校で雪上活動をすべきではありません。
今後も学校管理下である部活動で実施すべきではない
また、1989年五竜雪崩事故、2000年大日岳雪庇崩落事故、そして2017年那須雪崩事故など、学校もしくは文科省管理下の雪上講習でこそ重大事故は発生し、繰り返されています。それでもなお学校管理下である部活動で雪上での活動や訓練を実施する意義は今後もないのではないでしょうか。
質問と回答のまとめ
再発防止策に対する質問書とその回答書
番号 | 質問書 | 回答書 |
---|---|---|
1 | 2018.8.10提出 7月5日説明会への質問書 |
2018.9.20回答 「7月5日の説明会に対する質問書」に対する回答について 別紙 7月5日の説明会に対する質問書への回答(62項目) |
2 | 2018.11.12提出 再質問書 再質問(別紙) |
2018.12.14までの回答を要望中 栃木県教育委員会からの回答待ち |
説明資料
再発防止策の説明資料
番号 | 説明会 | 説明資料 |
---|---|---|
1 | 2018.7.5 再発防止説明会 |
資料1: 那須雪崩事故を教訓とした学校安全のための取組 |
コメント