那須雪崩事故について、防災科学技術研究所の研究員ら専門家による調査チームが「雪崩は人為発生の可能性が高い」という見解をまとめ、学会で報告したとの報道がありました。
栃木県那須町で17年3月、登山講習会に参加した県立大田原高の生徒ら8人が死亡した雪崩事故で、専門家による調査チームが「雪崩は人為発生の可能性が高い」という見解をまとめ、学会で報告しました。https://t.co/1up7BYE7Co
— 毎日新聞 (@mainichi) February 6, 2020
【那須雪崩事故】「人為発生の可能性高い」 専門家グループ 学会で調査結果報告 https://t.co/fhcsWAm3Gy #下野新聞
— 下野新聞 (@shimotsuke_np) February 8, 2020
学会でこのような発表がされた件については、他の遺族の方が把握されており、報道前に私たちに伝えてくれていました。なぜこのタイミングで報道されたのかはわかりません。
またこの発表とは別に同様の指摘をされている専門家の方もいらっしゃいます。
日本雪崩ネットワークの理事の方より出された事故の問題点を整理した報告書(リンク切れ)において、雪崩発生直前に雪面にクラックが走ることが複数の生徒によって目撃されていることおよび現場経験を通しての判断として「今回の雪崩の発生は、人為的な誘発によるものだろうと推察しています。」とあります。
事故の検証委員会の報告書では、雪崩が自然発生か人為的かについて「特定は難しい」と歯切れの悪い表現であったため、専門家の方より「人為発生の可能性が高い」と述べて頂けることはありがたく感じます。
那須雪崩事故は人災
雪崩発生が人為的であったかどうかは関係なく、那須雪崩事故は人災であったと言えます。
私個人の意見で言えば、雪崩が自然発生なのか人為的な発生であったのかという点を重要だとは思っていません。雪崩の発生原因がどうであれ、雪崩発生の危険性が高い状態であったにもかかわらず危険な斜面に足を踏み入れる判断をしたことが問題だと思っています。雪崩が自然発生であろうが人為的な発生であろうが、関係なく人災であったと考えています。
それでも「雪崩は人為発生の可能性が高い」と指摘してくださったこれらの専門家の報告はありがたく思います。これらの報告から那須雪崩事故について「自然発生した雪崩に巻き込まれたのではない」「危険な斜面に足を踏み入れて雪崩が誘発された」と言うことができます。
「雪崩は自然災害で、巻き込まれたのは仕方のないこと。だから、教員や学校を責めてもしょうがない」という論調を持たれる方が一定数いらっしゃる中で心強い指摘と報告であると思います。
また、過去の雪崩事故では雪崩発生が人為的な発生かどうかを論点に法廷で責任を争われたとも聞いています。不毛な議論に終止符を打つ意味でも重要な報告です。
那須雪崩事故は自然災害ではありません。人災です。
雪崩が発生したことが問題なのではなく、雪崩が発生する危険な斜面で講習を実施する判断をしてしまったことが問題なのです。
雪崩は人為的な発生
今回報道のあった報告とは関係なく、私の中では那須雪崩事故で発生した雪崩は人為的な発生であったろうと以前より結論付けています。
雪崩事故の9割が雪崩に遭遇した本人あるいは仲間の誘発であることが統計データから示されていると専門家の方が言われています。そんな中、那須雪崩事故の雪崩が自然発生だと言われるのであればむしろその根拠を示して頂きたいという思いを抱きます。
また、事故当日、危険な斜面に足を踏み入れた数分間の間にたまたま自然に雪崩が発生したと考えるのは不自然に感じます。斜面に足を踏み入れる10分前でもなく、足を踏み入れた5分後でもなく、足を踏み入れたまさにその数分間の間に雪崩が自然発生するというのは、乱暴な例えですがパチンコ台に座って1発目でチャッカーに球が入り大当たりを引くぐらいあり得ないようなものに思えます。確かに確率的にはゼロではないでしょうが、普通に考えればあり得ないことではないでしょうか。
那須雪崩事故での雪崩は人為的な発生であったと考えるのが自然だと考えられます。
ただ、人為的な発生であろうとなかろうとこの事故は人災であり、人為的な発生かどうかといった点を重要だとは思っていません。
大雪が降ったにもかかわらず講習会で雪中歩行訓練を実施した判断、訓練場所に危険な斜面を選定した判断、雪崩の危険性の高い斜面に足を踏み入れた判断、それらの判断こそが問題であったと思います。
那須雪崩事故は自然災害ではありません。人災です。
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