遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

刑事裁判を巡る動き

2022年2月10日、宇都宮地検は業務上過失致死傷罪で、講習会の責任者だった男性教諭ら3人を在宅起訴しました。その後、2022年10月25日に第1回公判が開かれ、現在までに6回の公判が行われました。

第7回以降の公判については以下の記事をご覧ください。

5月9日の第6回公判では、日本雪氷学会会長で名古屋大学名誉教授の西村浩一氏が証言を行いました。西村氏は、事故当日の積雪状態や雪崩のシミュレーションに基づく推定と、防災科研のデータを使用して、1班の足跡が斜面のどこまで到達していたかを明確化しました。

これまでの第3回公判から第6回公判まで、様々な専門家から証言を受けてきました。これらの証言によって、那須雪崩事故についてどの分野から検証しても問題が多かったことが明らかになりました。証言してくださった専門家の皆様や関係者の皆様に感謝いたします。

裁判はまだ続いています。
今後、真実が明らかになり、学校安全のために適正な結論が出ることを願っています。

これまでの刑事裁判の動きについて、以下に備忘録として第6回公判までをタイムラインにまとめました。第7回公判以降の最新のタイムラインはこちらまで。

刑事裁判を巡る動き
  • 2017.3.27
    那須雪崩事故発生
    栃木県高校体育連盟主催の春山安全登山講習会の雪上歩行訓練中に雪崩に襲われ、8人が亡くなり、40人が重軽傷者の被害の大事故が発生。
    この講習会は那須町の町営スキー場周辺で実施されており、栃木県内7つの高校の山岳部が参加していた。
  • 2019.3.8
    3教諭を書類送検
    栃木県警は、業務上過失致死傷の疑いで、講習責任者ら男性教諭3人を書類送検した。新たな積雪で雪崩の危険が高まっていたにもかかわらず、雪上歩行訓練の中止や行動範囲の限定などの措置を講じず、漫然と実施を決めた3人の判断に過失があり、事故につながったと判断した。
    報道
  • 2022.2.10
    3教諭を在宅起訴
    宇都宮地検は業務上過失致死傷罪で講習会の責任者だった男性教諭ら3人を在宅起訴した。3人が気象状況や地形の確認を怠り、漫然と雪上訓練を実施したことが事故につながったと判断した。
    報道 動画

    遺族

    事故から5年もの間待ちわびた結果でした。
    雪崩事故と聞くと「仕方のない自然災害だ」と思ってしまう人が多い中、那須雪崩事故は人災だったと言ってもらえたような気がしました。

  • 2022.10.25
    第1回公判
    検察側の冒頭陳述と被告側の罪状認否が行われた。
     検察側冒頭陳述 
    現場は急斜面で新たな積雪があり、登山経験が豊富な3人が、前日から出されていた雪崩注意報など必要な情報収集を行なえば、雪崩発生の一般的条件を満たしていると容易にわかったと主張。被告らは地形や当時の気象条件などについて情報収集をせず、生徒らの安全確保を怠ったと指摘した。
     被告側罪状認否 
    雪崩発生は予想できなかったと起訴内容を否認し、無罪を主張。
    報道 動画 動画

    遺族

    被告の3教諭は、罪状認否で謝罪の言葉を述べた直後に無罪を主張しました。自らの非を認めない謝罪に何の意味もなく、遺族を挑発する言葉としか思えませんでした。
    この態度には血が沸き立つほどの怒りを感じました。

  • 2022.12.20
    第2回公判
    被告側の冒頭陳述が行われた。
     被告側冒頭陳述 
    弁護側は冒頭陳述で「雪崩による死傷事故を防止する注意義務は怠っておらず、予見可能性は存在しない」と3教諭の過失を否定した。
    「積雪は15センチ程度で、大量という認識ではなく、雪崩が発生しやすい状況とは把握していなかった。」「事故は生徒が菅又被告の指示に従わず、引率教員が生徒を制止しなかったために現実化した。」などと検察側の主張に反論した。
    報道 動画

    遺族

    3教諭は、安全な訓練範囲を設定せず、安全確認をすることもなく生徒らの先に進みたいとの要望を許可しました。3教諭の指示に従った結果、危険な斜面に連れていかれて事故に遭ったのです。息子たちは指示に従わなかった訳ではありません。
    亡くなった息子たちに事故の責任をなすり付ける間違った主張を許すことはできません。

  • 2023.3.14
    第3回公判
    検察側の証人尋問が行われた。
     検察側証人尋問 
    雪崩教育の専門家として、NPO法人「日本雪崩ネットワーク」理事の出川あずさ氏が出廷。
    予見可能性を地形と積雪の2つに分け、「基礎的な知識があれば、現場が典型的な雪崩地形であることは容易に予見でき、その発生についても、注意信号の黄色が付いた状態であることは容易に予見できた」と証言。さらに、「積雪は記録されている30センチと考えるのが自然」と証言。
    報道 動画
  • 2023.4.5
    第4回公判
    検察側の証人尋問が行われた。
     検察側証人尋問 
    学校の安全教育の専門家で、事故検証委員会で委員長を務めた戸田芳雄氏が出廷。
    「教育活動現場では教諭が安全な環境を確保すべき」「雪崩が起きないと確信が持てる場所で訓練する慎重な判断をしなくてはならなかった」と証言。
    報道 動画
  • 2023.4.12
    第5回公判
    検察側の証人尋問が行われた。
     検察側証人尋問 
    事故現場近くの旅館経営者と山岳救助隊員が出廷。
    「当日の積雪は30~40センチあり、間違いなく大量に積もっていた」「雪崩の危険性が高かった」と証言。
    報道 動画
  • 2023.5.9
    第6回公判
    検察側の証人尋問が行われた。
     検察側証人尋問 
    名古屋大学名誉教授 日本雪氷学会会長で、事故検証委員会で副委員長を務めた西村浩一氏が出廷。
    気温や風速、降雪のデータからシミュレーションを実施し、事故当日の積雪状態や雪崩の状態を推定。また、防災科研のデータを使用して、1班の足跡が斜面のどこまで到達していたかを明確化しました。
    報道 動画

    遺族

    第3回公判から第6回公判まで立て続けにさまざまな専門家の方から証言を頂きました。
    これらの証言から那須雪崩事故はどの角度から切り取っても問題の多かったことが明確になりました。
    証言してくださった専門家の皆様、関係者の皆様に感謝いたします。

  • 2023.6.23
    第7回公判予定
    以降のタイムラインはこちらまで。
  • 2023.7.21
    第8回公判予定
  • 2023.7.31
    第9回公判予定

コメント

  1. 阿部幹雄 より:

    真実を明らかにし、責任を負うべき者たちを追求する姿勢。強い共感を覚えています。西村さんの証言は、科学的であり、緻密。ご遺族の皆さんの思いを裁判という仕組みの中で実現させるために有益なものでした。証言を聞いていて、西村さんの心の深層をうかがい知ることができました。西村さんも友人を遭難で失っています。その友人の最後の姿は、私が目撃しました。遭難の責任を負うべき者たちが、責任を全うしない。責任があることさえ理解しない。私は、そのことに強い怒りを覚えます。私の行動の原点は、“怒り”ではないかと思います。私の気持ちは、那須雪崩事故のご遺族の皆さんと同じ想いだろうと想像しています。勝手に・・ですが、皆さんのお役に立てればと思っています。苦しみも悲しみも癒えることはありません。私が経験した遭難の死者たちのご遺族、彼らと長くつきあい、そのことを実感します。

  2. 井川 治 より:

    御GU 父 様
    裁判の経過を読みました。どの証言を見ても主催者が有利なものは一つもない。以前、私も書かせていただき、事故でなく事件だと書きました。40年山を楽しんだ者として、最低限のことができなくて、残念と無念でなく、非情に腹立たしく感じました。皆さんに置かれては、どうか元気を出して、裁判の結果を待っていただくようお願いします。四国の、山好き人間、男、77歳、明日で78歳。

  3. SWind より:

    刑事裁判の状況を時系列でまとめて頂きましてありがとうございます。断片的な報道でしか知ることができず、大変助かります。第3回公判を傍聴できました。
     
    引き受けるリスクの話から始まって、危険の具体的な見方などわかりやすく、さすが日本の雪崩教育を牽引するだけあると感じました。先日、山岳会の例会で傍聴内容を仲間に伝えましたが、皆、問題点をよく理解できたようでした。出川氏の証言は、全体的に控え目であることが印象的でした。セミナーで「教員も雪崩の被害者ですから不要な糾弾をしないように」と話していたことが思い起こされます。今回の証言内容が検証委員会の事故調査報告書に入っていれば、どんなに良かったのにと感じました。個人的には「8人ではなく、もっと、15人とか亡くなる可能性があった」という証言が衝撃でした。8人という人数だけでも極めて大きかったので、それ以上の事態について考えていなかったからです。

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