遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

わたしたちの思い

遺族・被害者の思い

遺族の思い

被害者としての思い

 

第1回「那須雪崩事故 祈りと誓い」遺族代表の言葉

あなたたちに 会いたい

 

あなたたちに会いたい、心を通じさせたい そう願い、
今、ここに、家族、友人が集まっています。
こんな風になるなんて、誰も考えませんでした。
今でも、信じられません。
あなたたちがいないことが。

二〇一七年三月二十七日、午前八時三〇分過ぎ、この場所の、あの斜面で、
雪崩が起きました。
何十名という生徒たちが雪崩に飲み込まれました。
その中で、あなたたち八名が命を落としました。
このときから、あなたたちの運命は、狂ってしまいました。

あの斜面に登ることを決めたのは、
計画変更を決めた責任ある立場の人たちです。
あなたたちに、責任はありません。

あなたたちは、あの斜面を登りたいと、
あのとき、本当に、思ったのですか。
本当は、登りたくなかったのではないですか。

あのとき、あなたたちの目には、何が見えたのですか。
どのような音が、きこえたのですか。
脳裏に、何が浮かんだのですか。

雪崩に流されている時、何を思ったのですか?
怖かったでしょう。
お父さん、お母さん、助けて と叫びたかったのではないのですか。

それとも、
考える暇さえない勢いで、流されてしまったのですか。

いくら尋ねても、あなたたちの声は、私たちには届きません。

最愛の我が子が、こんな山の中で、雪に埋もれ
誰にも 看取られず
一人で息を引き取るなんて

かわいそうで、かわいそうで、なりません。
このことを思うと、私たち家族は、涙が止まりません。
言葉が出ません。

大田原高等学校でのあなたたちは、
夢と希望に満ちあふれた生徒と先生であったことを、
私たちは、よく分かっています。

あなたたちが夢見た将来は、
もう実現することができなくなってしまいました。
それを思うと、私たちは、苦しくなります。
悲しみで、居たたまれなくなります。

事故のことを知り、たくさんの友達が来てくれました。
みんなが、涙を流してくれました。
知り合いは、私たちの話を聞いて、涙してくれました。

あなたたちが、どれほど大切な存在であったのか、
どれほど掛け替えのない存在であったのか、
私たちは、分ってほしいと思い、関係者に訴えてきました。

そして、どうしたらこの事故を防ぐことができたのか、
何をすれば命を救うことができたのか、
ずっと自問自答をしてきました。
関係者にも質問し、答えを探し続けてきました。

県では、検証委員会が作られ、事故の経緯と原因の究明が検証され、
報告書が作られました。
高体連と登山専門部は、説明会を実施し、
私たちの質問に回答しました。
警察は必死に捜査してくれました。

でも、私たちには、
なぜあの天候の中で、あの斜面を登ることにしたのか。
何をどうしていれば、あなたたちの命を救うことができたのか、
納得できる答えが、見つかっていません。

私たちは、これからも、力を合わせ、
どうすれば、あなたたちを助けることができたのか、
その答えを探し続けます。

その答えが、雪崩事故を防ぐことになります。
新たな犠牲者をださないことに役立つはずです。

今、ここに立ち、あなたたちの笑顔を、思い出すと、
あなたたちのやりたかったこと、
夢見たこと、
希望したこと、
それを実現させてあげたかった。
その想いで、いっぱいです。

もう一度、あなたの顔を見たい、
あなたの笑い声を聴きたい、
あなたの匂いを感じたい。

そして、
あなたの「ただいま」という声を聴きたい。

平成三一年三月二六日
那須雪崩事故遺族・被害者の会

検証委員会最終日の遺族コメント(2017年10月15日)

 3月27日の那須雪崩事故から、早半年が過ぎました。しかし、私たち遺族・被害者の心の傷が癒えることはありません。私たちは、今後も、この心の傷と一生付き合って生きていくことになると、覚悟しています。 この半年間、関係者による事故の説明会や検証委員会、雪崩に関する自主学習会において、私たちは、安心・安全が第1に優先されるべき教育の現場において、なぜ今回の事故が起きたのか、それぞれの将来に向かって、やる気に満ちあふれた若者8名の尊い命が雪崩によって、なぜ奪われることになったのか、その原因を究明しようとしてきました。その目的は、二度と同じような事故が起きないようにすることです。そして、私たちと同じ心の傷を負う人が出ないようにするためです。 しかし、事故発生後、しばらく経った説明会において、紙1枚程度の資料により事故の説明会が行われようとしたり、過去の同講習会における雪崩事故発生が遺族・被害者側の指摘から出てきたりしました。また、現場における調査や改善策の話し合いの中心とならなけらばならないはずの、登山専門部委員長が半年間近く決められず、遺族・被害者の強い要望によりやっと決められるということもありました。

 

遺族・被害者としては、本当に現場の方たちは自分たちで今回の事故を反省して、調査・改善しようとしているのかと、不信・疑問に思われることがありました。私たちは残念であり、時には憤りを覚えることもありました。

委員会の中間・最終報告書でも確認されました通り、那須地域に出されていた雪崩注意報を無視し、目的や行動範囲を明確にしないまま、雪崩が起きやすい場所に行って訓練をしたことは、明らかに現場の責任者に問題があったと考えます。今回の春山安全登山講習会の目的には、

①積雪期登山の正しい在り方を示し、生徒に理解させる。
②安全登山に必要な知識・技術を習得させる。
③春山登山の事故防止に役立てる。

とあります。

しかし、現場の責任者には、3月の雪のある山で、複数の高校の生徒が多く参加するという大きな講習会にも関わらず、もし事故が起きたらという考えと備えがまったく見られませんでした。

①積雪期登山防止のための研修
②過去の同講習会の反省・改善
③当日使用する場所の各種情報の入手
④緊急時の連絡手段の確保と維持
⑤緊急連絡簿の作成・持参
⑥緊急時に備えた十分な救助用具の持参 等

これらのことが現場責任者から完全に抜け落ちてしまったのは、登山専門部を監督・指導すべき立場にある各高校管理職、それぞれの監督・指導機能がまったく働いていなかったことにあると思います。

検証委員会が行ったことは、あくまでも事故の検証にすぎません。私たち遺族・被害者は、今回の事故の反省・改善はこれからだと思っています。

そして、本当の意味での反省・改善とは、今回の関係者全員が、各自の心で責任を感じて、各自の頭で考えて行動することにあると思っています。
どうぞ、本気で反省・改善をしてください。遺族・被害者より、お願いします。そして、亡くなった8名の若者たちに成り代わって、お願いします。
生徒、保護者、現場の職員にとって、安心・安全な教育現場をつくってください。

最後に、4月より那須雪崩事故の検証に当たってくださった、戸田芳雄委員長をはじめとする委員の皆様に、お礼を申し上げます。
それぞれの専門的な立場から熱心に意見を出し、議論し、事故等の調査・報告に当たってくださり、ありがとうございました。お陰様で、多くの人が事故の詳細を知り、さらには、その関係者が今後の事故防止の指針を具体的に得ることができました。
また、戸田委員長には、毎回、委員会終了後に、私たち遺族・被害者の話を真摯に聞いていただきありがとうございました。
検証委員会の皆様におかれましては、これからも、それぞれの職場で、お体に気を付けてご活躍ください。

平成29年10月15日
大田原高校 遺族・被害者一同


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