2024.6.17更新 2024/6/12 被告側控訴の内容を反映
2024. 5. 31 更新 2024/5/30 判決公判 の内容を反映
2024. 3. 1 更新 2024/2/29 第17回公判 結審 論告求刑 の内容を反映
2024. 1. 6 更新 2023/12/19 第16回公判の内容を反映
2023.11.25 更新 2023/11/22 第15回公判の内容を反映
- 2017.3.27那須雪崩事故発生栃木県高校体育連盟主催の春山安全登山講習会の雪上歩行訓練中に雪崩に襲われ、8人が亡くなり、40人が重軽傷者の被害の大事故が発生。
この講習会は那須町の町営スキー場周辺で実施されており、栃木県内7つの高校の山岳部が参加していた。 - 2019.3.83教諭を書類送検栃木県警は、業務上過失致死傷の疑いで、講習責任者ら男性教諭3人を書類送検した。新たな積雪で雪崩の危険が高まっていたにもかかわらず、雪上歩行訓練の中止や行動範囲の限定などの措置を講じず、漫然と実施を決めた3人の判断に過失があり、事故につながったと判断した。
報道 - 2022.2.10
- 2022.10.25第1回公判検察側の冒頭陳述と被告側の罪状認否が行われた。
検察側冒頭陳述
現場は急斜面で新たな積雪があり、登山経験が豊富な3人が、前日から出されていた雪崩注意報など必要な情報収集を行なえば、雪崩発生の一般的条件を満たしていると容易にわかったと主張。被告らは地形や当時の気象条件などについて情報収集をせず、生徒らの安全確保を怠ったと指摘した。3被告 罪状認否
雪崩発生は予想できなかったと起訴内容を否認し、無罪を主張。
報道 動画 動画被告の3教諭は、罪状認否で謝罪の言葉を述べた直後に無罪を主張しました。自らの非を認めない謝罪に何の意味もなく、遺族を挑発する言葉としか思えませんでした。
この態度には血が沸き立つほどの怒りを感じました。 - 2022.12.20第2回公判被告側の冒頭陳述が行われた。
被告側 冒頭陳述
被告側弁護人は冒頭陳述で「雪崩による死傷事故を防止する注意義務は怠っておらず、予見可能性は存在しない」と3教諭の過失を否定した。
「積雪は15センチ程度で、大量という認識ではなく、雪崩が発生しやすい状況とは把握していなかった。」「事故は生徒が菅又被告の指示に従わず、引率教員が生徒を制止しなかったために現実化した。」などと検察側の冒頭陳述で述べた主張に反論した。
報道 動画3教諭は、安全な訓練範囲を設定せず、安全確認をすることもなく生徒らの先に進みたいとの要望を許可しました。3教諭の指示に従った結果、危険な斜面に連れていかれて事故に遭ったのです。息子たちは指示に従わなかった訳ではありません。
亡くなった息子たちに事故の責任を擦り付ける間違った主張を許すことはできません。 - 2023.3.14
- 2023.4.5
- 2023.4.12
- 2023.5.9第6回公判
- 2023.6.23
- 2023.7.21第8回公判検察側の証人尋問が行われた。当日講習に参加していた生徒が出廷し、主に渡辺被告の事故当日の行動について証言がなされた。
講習会参加真岡高校生2名 証言
検察側証人尋問
講習会で2班だった真岡高校山岳部の元生徒2人が出廷。
「訓練開始前に訓練範囲や行ってはいけない場所、最終目的地の説明はなかった」と証言した。
また、生徒の一人は、樹林帯上部で休憩した際、渡辺被告より「大田原高校に続くぞ」と、さらに上に登る指示があったと説明した。もう一方の生徒は「その後の指示はなく、まだ続く(登る)と思った」と証言した。
被告側証人尋問
検察側証人の真岡高校山岳部の元生徒2人を相互申請で尋問。
訓練前に訓練範囲の指示があったか、樹林帯上部で休憩後に渡辺被告からの下山の指示があったかなどを確認したが、生徒らはいずれも「(そのような指示があったとの)記憶はない。」と証言した。
報道 動画第7回公判、第8回公判と当時の生徒であった方から証言を頂きました。証言台に立つにはかなりの勇気が必要だったかと思います。感謝いたします。
立派な大人に成長された姿に息子を重ね合わせ、それだけで胸がいっぱいになりました。 - 2023.7.31第9回公判検察側の証人尋問として講習会に参加していた那須清峰高校と真岡女子高校の顧問2人が出廷し、当日の行動について証言した。
那須清峰高校教員 証言
検察側証人尋問
個人での登山経験はほとんどなく、講習を受ける立場で3班に加わっていたと証言。
事故当日の朝、猪瀬被告より電話があり、「雪で車がすぐに出せないので、そちらの様子を教えてください。」と言われ、「結構積もったので今日は無理だ。」と伝えたと証言。
訓練開始前のセンターハウス前で、「茶臼岳登山中止、2日目の訓練のおさらい。」とだけ訓練内容の説明があり、訓練範囲や行ってはいけない場所の説明がなかったと述べた。訓練内容が2日目のおさらいでは斜度が必要なので、少し樹林帯に入ることもあるかもとの認識だったが、「嫌だなー、登るんだなー。」と思いながら先行する班を追うような形で樹林帯を登ったと述べた。
また、猪瀬、菅又、渡辺被告について、最も知識と経験があり、この3名で計画変更を決めたとの認識を示した。真岡女子高校教員 証言
検察側証人尋問
女子班である5班の講師として講習に参加。自分が講師であることは講習当日知ったと証言。
事故当日朝の講師打ち合わせの場で「茶臼岳登山中止、スキー場内での訓練、2日目と同じ班編成。」と説明を受け、「私の認識では(訓練範囲は)スキー場内。」と述べ、「(説明の中で)樹林帯という話は私の記憶ではなかった。」と証言した。行ってはいけない場所として「ゲレンデ上部。」とチケット売り場ガラス面に貼ってある地図で説明されたと述べた。
「女子隊は私しかいなかったので、訓練場所について猪瀬被告に質問した。」「女子は第1ゲレンデを回れば十分だ、と猪瀬被告から言われた。」と述べた。
「(その後の)生徒への説明でも樹林帯という言葉は出ていない。」「生徒はスキー場を歩くんだったらとホッとした様子だった。」と述べた。
また、3被告についての登山知識や経験は別格で、訓練内容の変更について意見することはなかったと述べた。 - 2023.9.5第10回公判検察側、被告側双方の申請のあった事故当日の講習会の3班と4班の主講師を務めた教員2名が出廷し、当日の行動について証言した。
講習会3班主講師 証言
検察側証人尋問
訓練範囲について菅又被告から「ゲレンデ周辺でラッセル訓練。」とだけ言われ、それ以上の説明はなかったと証言。樹林帯について説明がなかったため、「ゲレンデ内だけの訓練で、樹林帯は訓練範囲に含まれないとの認識だった。」とし、「前の班が樹林帯が登っているのを見て驚いた。」と述べた。
さらに、菅又被告からの訓練についての説明の後、渡辺被告から「第2第3ゲレンデの奥には行かない。」とセンターハウスのチケット売り場ガラス面に貼ってある地図で説明されたと証言。
また、被告側弁護人と会った時、登山専門部OBの山岳関係者2名の立ち合いがあったことを証言した。講習会4班主講師 証言
検察側証人尋問
講師打ち合わせの場で、「茶臼岳登山中止、ラッセル訓練実施。」と菅又被告から説明があり、「第3ゲレンデの上方は危険だ。」と渡辺被告からチケット売り場ガラス面に貼ってある地図で示されたと証言。訓練場所がよくわからなかったため、打ち合わせ後に猪瀬被告に個別に質問したところ、「ゲレンデを進んでちょっと樹林帯を行けばよい。」と言われたと述べた。
訓練場所の説明は講師に対してのみであり、生徒や参加教員に対しては訓練場所や行ってはいけない箇所の説明はなかったと証言した。さらに、事故当日までに那須町に雪崩注意報が出ていたことを自分のスマートフォンで確認していたと述べた。
また、被告側弁護人と会った時、登山専門部OBの山岳関係者2名が立ち合うことを求められたが、「私個人の話をするので、直接話をしたかった。」として断ったと証言した。 - 2023.9.15第11回公判被告側証人として、事故当日に救助にあたった那須山岳救助隊副隊長(当時)、現隊長が出廷し、当日の救助の様子を証言。
山岳救助隊副隊長 証言
被告側証人尋問
事故当日の救助活動について証言。
当日のゲレンデでの積雪状態を、「深いところでヒザまで来ない程度、浅いところでふくらはぎぐらいまで埋まる。」と証言し、証言台での計測でそれぞれ「43cm」「29cm」と示した。また、樹林帯では「斜面なのでヒザ下、ふくらはぎの真ん中程度までの積雪。沢筋ではさらに深いところがあった。笹がある場所では太ももぐらいまで埋まった。」と証言。
救助現場の積雪状態については「3.5mの長さのゾンデ棒が全部刺さった。」と証言し、かなりの量の雪崩のデブリが堆積していたことを示唆した。
検察側証人尋問
雪崩の起きやすい地形を問われ、「雪が積もっていて斜度18度以上ならどこでも起こり得る。特に危険な斜度は30-35度。」と答え、雪崩の危険性が高まる気候について「前日にまとまった雪がある時。10センチ積もっても起きている。通常20-30センチあれば警戒する。」と証言。
リーダーの立場でやるべきことを問われ、「リーダーの立場であれば、事前に最低3日分ぐらいの天候を確認し、地形図を見たり下見によって地形も確認する。」と指摘。
また「高校生の登山であれば安全第一で行うべきであった。」と強調。ラッセル訓練をどこでやるべきだったかとの質問に、「私だったらゲレンデの中だけで実施した。」と答えた。
報道 動画 - 2023.10.13第12回公判被告側証人として、国立登山研修所の講師で、那須雪崩事故検証委員会の委員を務めた名古屋工業大学教授の北村憲彦氏が証言。
国立登山研修所 北村氏 証言
被告側証人尋問
「登山パーティはリーダーの指示に従うべきであり、従わない場合には登山パーティーが崩壊する。」と証言。また、リスクマネジメントと計画立案の重要性を強調し、「高校生でもメンバーはリーダーと一緒に計画を立てるべきで、保護者や高体連も関与すべきであったが、当時はそのような体制にはなかった。」と述べた。
雪崩の危険性について、「個人の経験として壁のような急な斜面で雪崩の危険を感じたことはあるが、歩いて登れる斜面で危険を感じたことはない。」と証言。「雪崩の危険を感じるのは、新雪で歩くと雪がずれるのがわかる時。」と述べ、「そのような感触のない斜面での判断は難しい。」と語った。
報道 動画今回の証人尋問では、設定した安全な訓練範囲を生徒が勝手に逸脱した前提で被告側弁護人からの質問と証言がありました。すでに何人もの生徒・教員から、訓練範囲が設定されていないこと、生徒は被告らの指示に従っていたことが証言されています。
これらの証言を無視しての尋問で、非常に不快で腹立たしかったです。また、高体連などの組織体制の不備を指摘する証言がありました。しかし、これは被告らの無罪という主張を裏付けるものにはなりません。何のための証言であるのか不可解です。
この証言から被告らに対する情状酌量を求めるのであれば、まず無罪という主張を撤回し、罪を認めるべきです。 - 2023.10.25第13回公判渡辺浩典被告への弁護側からの被告人質問。
また、被告側証人として、那須雪崩事故検証委員会の委員を務め、富山県立立山カルデラ砂防博物館学芸課長、国立登山研修所講師の飯田肇氏が証言。国立登山研修所 飯田氏 証言
被告側証人尋問
雪崩の危険性の要素として、雪崩が起きた痕跡やクラックなどの不安定性要素の確認が一番重要であり、現場で雪崩が発生した痕跡のような直接的なものがなければ今目の前の斜面で雪崩が起きるとは予見できないと証言。
検察側証人尋問
高校生の部活での講習を前提とした場合についてどのような対応が必要かとの問いに、「一般の登山と比較しても研修の度合いが高く、登山の経験の少ない高校生を相手の講習であるから安全第一に実施すべき」と証言。さらに検察官からの質問に答える形で「安全サイドに立った準備をすべき」「少しでも雪崩の危険性のある斜面での訓練は基本的に実施すべきでない」と語った。
また、事故が遭った斜面は「植生がない」「斜度30-45度」「積もっている雪質が不安定」といった雪崩発生の要因が揃っているため危険な斜面であったこと、これらの要因については国立登山研修所の研修で全て教えていること、訓練開始前の調査と現場の下見をすべきことであったことを証言した。渡辺被告 被告人質問
弁護側質問
警察・検察の自らの調書に対して異議を唱えた。
「地形図も使わず、話し合いだけで訓練範囲を決めたと証言したら、調書では『大雑把に訓練範囲を決めた』と言い換えられた。」「その時の現場の状況を見ながら臨機応変に対応したと証言したら、調書では『行き当たりばったりに行動した』と言い換えられた。」などと、本意ではないネガティブな表現に調書の内容が書き換えられたと証言。事故当日の天候については、「それほど大量の積雪ではなく、降雪、風も強くない、行動できる状態。」と証言し、「スキー場周辺、ゲレンデと樹林帯で歩行訓練の実施。」を自ら提案したと証言した。
訓練開始前に主講師を集め、「班別でスキー場周辺と樹林帯で歩行訓練を実施。」と菅又被告から説明し、「第2ゲレンデ奥には行かない。」と自分が付け加えて説明したと証言。第2ゲレンデ奥について「自分の感触で危険だと思った。(現地を)指さして説明した。」とし、ゲレンデマップを使って説明したのでは?との問いには「私はしていない。可能性としては菅又被告。」と答えた
また、「見えている範囲での訓練なので、目視で積雪状態を確認しただけで、(天候や地形図の確認などの)情報収集は必要性を感じなかった。」とし、「事故が起きた斜面は見えていなかったのでそこでの行動は全く考えていなかった。」と証言した。樹林帯を登り切った後、先行していた1班の状況について、「自分たちの上方におり、一瞬視界に入った。」とし、「1班が訓練範囲を逸脱した認識があった。」と証言した。このタイミングで渡辺被告から「山頂行くぞ。」と言われたという真岡高校生徒の証言については、「言っていない。」「それは出発前に菅又先生が言った言葉だ。」と否定した。
那須周辺の登山に精通している地元の旅館経営者に訓練場所について確認をとらなかったことに関しては、「高齢であるため、わざわざ聞きにいくのは迷惑かと思った。」と証言した。
公の場で被告が事故について語るのは、5年半振りのことです。しかし、証言内容は事故の核心部分に触れることもなく、表面的なところをなぞっただけで終わりました。
渡辺被告の教え子であった真岡高校の生徒の証言内容を否定するなど、教員のプライドもかなぐり捨てて責任逃れしている印象でした。 - 2023.11.14第14回公判渡辺浩典被告への検察側からの被告人質問、菅又被告への弁護側および検察側からの被告人質問。
渡辺被告 被告人質問
検察側質問
訓練範囲について、「ゲレンデおよび樹林帯と定めた。」としつつ、「球技のコートのようにライン一本で示せるものではなく、説明しづらい。」と述べ、生徒や顧問教員らにどのように説明したのかとの質問には「私は説明する立場ではない。」と答えた。
訓練前の事前の確認について、「見える範囲で避難が容易で退避できる場所での訓練であるので、行動する現地の情報が重要。」として、雪崩注意報や地形図の確認、下見については「見える範囲での訓練では必要ない。」と答えた。県教委からの冬山登山についての通知の記載、”冬山はいつでもなだれのおこる危険性があるので、降雪中とその翌日は行動を中止するようにすること。”について、「通知は一般論であり、個々の登山には適さない。道路を歩くと事故に遭うので歩くなということと同義。」と述べ、「(通知が掲載されている本は)一人一冊持っているようなものではなく、管理職試験でみる程度のもの。全文を熟知することはない。」として「(事故前には)冬山登山申請の際の行動時間の部分のみ参照した。通知文は管理職にならないと読まない。」と述べた。
菅又被告 被告人質問
弁護側質問
警察、検察の調書は自分の本意ではなく、ストーリーを勝手に作られ、認めさせられたと主張。
当日の積雪について、テント場からセンターハウス付近まで、センターハウスからゲレンデの一本木まで、さらに樹林帯を登り切った斜面もすべて積雪15センチぐらいで、樹林帯の斜面は場所によって浅いところと深い場所があったと証言。訓練範囲について、猪瀬被告、渡辺被告との3人の打ち合わせの結果「一本木までのゲレンデ及び樹林帯」と決め、「見えている範囲での訓練」「明確に訓練範囲を決めた」とした。さらに、各班の主講師への説明は「ゲレンデ、樹林帯での歩行訓練」と訓練内容の説明をしたが、それ以上の訓練範囲の説明については「していない、各班の裁量だ。」と述べた。その上で、「(調査や下見の必要性は)感じなかった。下見をするよりもその時の現場の判断が重要。」と述べた。
当日の行動について、樹林帯を登り切った場所で1班の生徒に「戻ろうか?」と話をしたが、休んでからまだ10分くらいなので先に進みたいと言われ、「その先の斜度や雪質から安全性を判断して進むことにした。」と述べた。すでに「(訓練範囲を)やや超えた認識。」であったが、「生徒はまだ先に行きたそうだったので、押し切られた。」とし、「その先の木々がまばらになるあたりまで(行くつもりだった)。」と証言した。さらに、「その後5分でやや急な斜面で止まる指示を出した。滑落の危険性を考えた。」と述べ、雪崩の危険性については「斜度、雪の状況から(危険性を)感じなかった。新雪も15センチ程度と認識しており、総合的に判断した。」と述べた。止まる指示に対して生徒が不満げな反応だったので「じゃあどこまで(行きたい)?」と問うと、生徒からは「あの岩まで。」と二つ岩と呼ばれる岩を指さされ、「言うことを聞かない生徒だけを置いていくこともできないので(許可した)。」、「登り始めてしばらくして雪崩に巻き込まれた。」と述べた。
検察側質問
生徒からの「あの岩まで。」という要望に対して「他の生徒を連れて帰ることもできず、しぶしぶ承諾した。」とし、「じゃあ、あそこの岩まで登って帰ろうと大きな声で伝えた。」と述べた。
訓練範囲について「見える範囲で。」「樹林帯の中まで。」とし、「明確な線はないが、樹林帯を超えてはいけない。」と述べた。しかし、教員や生徒に樹林帯を超えてはいけないと説明したかとの問いについては「(説明)していない。」と答えた。雪崩の危険性の因子として「急斜面、雪質、降雪量」を挙げ、急斜面については「私の知識では35度以上の斜面が雪崩が起きやすい。」とし、降雪量についてどうなると危ないかとの問いに対しては「大量の、どのくらいかはわからない。」と答えた。雪崩に対する安全対策に何をすべきかとの問いに対しては、「条件を考えてその場で判断する。その場その場での判断で一概に言えない。」と答えた。
また、「雪崩のリスク評価をして事故を防ぐ手立てはあるのか。」との問いに対しては「わかりません。」と回答し、「登山の安全確保とはいかにリスクを排除することではないのか。」との問いについても「わからない。」と答えた。予想はしていましたが、全く反省のない態度、根拠となる証拠や証言のない責任逃れのための不合理な主張が繰り広げられ、子の命を奪われた私たち親にとって精神的に厳しいものとなりました。積雪15センチ… まだこんなウソを。ウソや道理が通らない主張も言い続ければ押し通せるとでも思っているのでしょうか。
第15回公判
- 2023.11.22第15回公判前回から引き続きの菅又被告への検察側からの被告人質問と猪瀬被告への弁護側および検察側からの被告人質問を実施。また、被害者参加制度を利用し、被害者遺族および被害者参加代理人の弁護人より3被告へ質問をした。
菅又被告 被告人質問
検察側質問
警察の調書に記載された、菅又被告が描いた事故当日の積雪に埋もれた足の図に関して説明が行われた。図では40センチの積雪に足が30センチ埋まっているとされていたが、菅又被告は「警察に誘導された。本当は積雪は20センチだったが、それが認められなかった。警察は雪が吹き溜まっている場所を考慮しろと指示し、そのように描かせた」と主張した。警察調書には、「飛行機が落ちる可能性を考えて歩いている人はいない」という記述があり、被告は取り調べで、これと同じくらい雪崩の予見は不可能だと述べたことを認めた。被告は現在も同様の考えを持っているかと尋ねられ、「はい」と小声で返答。また、この事故が避けられなかったかどうかについて、「自分の想定を超えていた」と答え、判断ミスだったかとの問いには「いいえ、違います」と強く反論した。
急斜面に差し掛かると、「岩まで行って帰ろう」と1班の生徒と教員に伝え、その決定については、「行きたい人だけ行けと言うわけにもいかず、また置いて帰るわけにもいかなかったので、許可した」と述べた。
裁判官質問
1班を止めた状況について問われ、以下のように答えた。「1回目は樹林帯上部で、”もうここまで来たので帰ろう”と言った。」「2回目は、木がまばらになる地点で”止まれ、帰るぞ”と伝えた。」「3回目は急な斜面の手前で”これ以上は斜面が急になるから帰るぞ”と伝えたが、生徒たちが不満そうだったため、”じゃあどこまでだったら行きたいんだ”と発言した。」
猪瀬被告 被告人質問
弁護側質問
警察と検察の調書について、「かなりの誘導を感じた。こんなことを書かれていたのかと感じた。」と、不満を表した。事故当日の訓練範囲について、センターハウス前で菅又被告、渡辺被告と訓練範囲を打ち合わせて「スキー場と樹林帯で訓練する」と決めたことを述べた。警察の調書に「樹林帯」という言葉がない点を指摘され、「失念していた。(他の被告人との)記憶のすり合わせで二人の先生が樹林帯と言ったので、(そういう言葉が出たことを)確信した。」と述べた。
菅又被告と大田原高校の生徒との信頼関係構築に関しては、「(信頼構築が)できていなかった。」と述べ、生徒が指示に従わなかった理由として、「生徒が主体的に斜面を登りたがっていた。引率の毛塚先生は生徒の意思を尊重していた。」と答え、1班は登山パーティとして崩壊していたかとの問いに「はい。」と答えた。
下見の必要性に関しては、「見える範囲だったので、必要ないと感じた」とし、雪崩注意報については「現地での情報がより重要だと思った」と述べた。
検察側質問
記憶のすり合わせに関して、被告は「起訴後、弁護士事務所で実施した。被告3名の他に弁護士が同席し、登山専門部OBで元国立登山研修所所長のOO氏もいた」と説明した。「事務所には何度も訪れ、毎回記憶の確認を行った」とも付け加えた。すり合わせにより失念していた点を思い出したかとの問いには「はい」と答え、その過程への抵抗感については「なかった」と述べた。他の被告の話を聞いて記憶が変わったかとの質問には「私の考えを確信することになった」と答え、記憶のすり合わせの正当性を主張した。猪瀬被告が事故当日持っていた荷物に関して、検察官が荷物の中に那須岳の地形図31枚と安全ハンドブックがあったことを明らかにした。被告は「荷物は車の中にあった。大会時には持ち歩く」と説明し、地形図については「生徒たちに配る予定だったが忘れた」と証言した。
安全ハンドブックが参照用であるかとの質問に対しては「そうだ。何かの際に」と答えたが、検察官がハンドブックに雪崩の危険性を判断するポイントが記載されていることを指摘し、そのポイントを実践したかとの問いには無言で答えなかった。
被告は、1班が到達した上部斜面について「訓練範囲からは外れていたが、(菅又被告が)安全を確認したと思う」と述べ、「そこへ行くとは思っていなかった」とも付け加えた。
生徒が勝手に行ったかどうかの質問に対しては、「”勝手に”とは言っていない。彼らは主体的に判断した。最終的には菅又先生の判断で(行動した)」と答えた。生徒たちが菅又被告を信頼していたかとの問いには「はい」と答え、生徒が勝手に行ったと思っているかと再度問われると「生徒が勝手に行ったなんて..」と語尾を濁らせた。
警察の調書に関して、内容が本意でなかった点を弁護士に相談したかとの質問に、「一度くらい取り調べ中に相談した」と回答し、「取り調べごとに相談はしなかった。起訴前にも相談していない」と説明した。なぜ相談しなかったかと尋ねられ、「このような雰囲気であることを伝えただけで、明示的には相談していない」と述べた。
弁護側反対質問
被告人弁護士は、取り調べに関する相談があったとの認識を否定し、混乱が生じた。当時調書が本意ではない内容であったとの認識がなかったため相談しなかったのではとの問いには「(本意ではない認識は)あります。」と答えた。裁判官質問
渡邉被告と菅又被告の話を踏まえ、判断に問題はなかったかとの質問に、「はい」と回答。また、避けられない事故だったかとの問いにも「はい」と答えた。菅又被告が引率した1班が訓練範囲を逸脱していたかとの問いに「はい」と答え、「菅又先生がその場で判断したことだから。」「安全を判断してそういう形になったとイメージした」と語った。
(1班が到達した上部斜面)そこはアウトなのかセーフなのかと問われると「わからない」と答え、菅又被告の判断が間違っていたかと問われると、「間違っていたということになる」と答えた。
猪瀬被告 被害者参加人質問
被害者参加制度を利用して、被害者参加代理人の弁護士より質問。
亡くなった生徒、教員のそれぞれの印象を問われ、「いろいろなことに対して一生懸命」「やる気を内に秘め、やる時はやる」「地道にコツコツ頑張る子」「おしゃべりで何でも話す」「一本気なところがある」「実直でいろいろなことを丁寧にこなす」などと生徒教員一人一人の印象を答えた。その上で生徒たちが言うことを聞かないで登山したことはないですよねとの問いに「はい。」と答え、生徒たちが主体的に行動してパーティが崩壊したのかとの問いには無言で答えなかった。また、菅又被告が止めてくれれば事故は起きなかったのではとの質問にも無言で答えることはなかった。
渡邊被告 被害者参加人質問
被害者参加制度を利用して、被害者参加代理人の弁護士より質問。
渡邊被告は感情的になり、大声で答える場面が多かった。質問の趣旨から逸れた答えを続け、裁判長によって何度か中断され、質疑が成立しないことがあった。最初に事故後の記者会見への同席について問われると、「いいえ、していない!」と大声で答え、弁護士が続けて次の質問をしようとすると、怒りを露わにして「最初の記者会見の件は?どうした?」と逆質問した。
裁判では刑事責任を認めず無罪を主張しているが、懲戒処分である停職処分を受け入れている矛盾について問われると「県が判断することなので服した。公務員なので」と答えた。停職処分に意義を申し立てることができることについては「知らなかった」と述べた。
また、雪崩発生後十数分で救命率が急激に下がることについて知っているかどうか質問され、「知っている」と答えた。続いて事故後すぐに救命活動をしていませんよねと問われると、「1班が雪崩に巻き込まれていたと認識していない。第2波が来るかもしれないので尾根へ異動して待機するように指示し、ケガをして動けない生徒がいたので…(さらに語り続ける)」と質問の趣旨と異なることを早口で語り続けて裁判長に止められた。
さらに、事故直後に菅又被告に連絡したのかと問われ、「直後とは?1秒後?1分後?」と激高しながら答え、質疑が成立しなかった。
菅又被告 被害者参加人質問
被害者参加制度を利用して、被害者遺族より質問。
弔問時に口にした「すみません」という言葉について、この言葉が何に対してのものなのかと事故についての認識を問われた。この質問に対して「8人が亡くなり多くのケガ人が発生した。私が関わったことで事故が起こった。申し訳なく思っている」と答え、「詳しくは話せないのは、遺族からの多くの質問があり、そのあと送検され、答えることができなくなったため」と述べた。
同行していた生徒や教員への罪悪感はないのかとの問いには、「謝罪の気持ちはある。説明会や弔問の際に何度も謝罪した」と答えた。
被告3教諭の証言は矛盾に満ちたものであり、このような主張と発言を繰り返す被告らはもはや教師でも人でもない、自らの保身だけで動くケダモノになってしまったとしか思えませんでした。
手が震えるほどの強い怒りを感じましたが、これ以上もう何を言っても仕方がない、彼らには知性もなく、言葉すら通じないのだろうという諦めの思いの方が強くなり、呆れ返った感情が湧き出てきました。
矛盾していると気づきながら自分に都合のよい筋も通らない主張を繰り広げ、矛盾を指摘されると感情的になって当たり散らす..きっと彼らのいた教育現場ではこのような不条理も押し通すことができたのでしょう。
法廷で繰り広げられた彼らの態度は、彼らの長い教師生活で染み付いた保護者や生徒に対する横柄な態度そのものなのかもしれません。
第16回公判
- 2023.12.19第16回公判
第17回公判
- 2024.2.29第17回公判 結審被告3人に対する論告求刑公判が行われた。
検察側論告
現場周辺の写真や関係者の証言などから事故当日の積雪量は30センチ以上であり、雪崩が発生した斜面の斜度などから雪崩の危険性を容易に知り得た。また、安全を確保するための明確な訓練範囲を定めず、周知徹底も怠った。
大量降雪や急斜面の危険性などを全く検討せず、安易に計画を変更し漫然と訓練を行った。過失や被害結果は重大。
被告に本件の重大性を十分に認識させ真摯な反省を促すためにも、厳しく処罰する必要がある。
被告3名に対し、禁錮4年を求刑する。
被害者論告
この裁判は未来の世代への教訓として重大な意味をもつ。8名が生きた証として、学校安全の礎となる判断をして頂きたい。被告人らには、軽井沢バス事故長野地裁判決に倣って、実刑に処するのが相当と考える。
弁護側弁論
被告らはいずれも無罪である。
積雪は15センチ程度であり、目視や体感で訓練実施のための必要な情報を十分得ており、安全な訓練範囲を設定した。滑落は予見できても雪崩は予見できず、注意義務違反にあたらない。
生徒が頂上に登る強い意志を有しており、菅又被告の制止を押し切って訓練範囲を逸脱した。
3人の行為と雪崩による死傷事故に因果関係はない。被告最終陳述
猪瀬被告「弁護士に述べてもらった通り。」
菅又被告「この事故を一刻たりとも忘れることができない。被害者のことを思うと心苦しく思っている。」
渡辺被告「私が携わった講習会でのことで事故が起き、心を痛めている。裁判については弁護人に述べてもらった通り。」禁錮4年、この求刑に至るまで事故から7年掛かりました。証言と証拠が検察と証人によってしっかりと積み重ねられ、ようやくここに至ったとの思いです。
この事故を忘れ去ることなく、未来の世代への教訓として残すべきだとの私たち遺族の思いが伝わった結果だと感じました。感謝いたします。
一方、弁護側の最終弁論は、被告3人の証言のみに基づいたものであり、何の根拠も証拠もありません。
積雪15センチ?目視や体感で情報収集!?生徒が制止を振り切った?安全注意義務は存在しない?この弁論は、現実から目を背け、彼らがこうあって欲しいと願った妄想を述べただけに過ぎず、聞くに値しないものでした。被告3教諭は息子の弔問に訪れることもなく、話もできなかったため、彼らがこの事故をどのように捉えているのか知りたくてたまりませんでした。彼らの考えを聞けるこの裁判に掛ける期待も大きかったです。しかし、その結果がこのような聞くに値しない妄想を聞かされることになってしまい、残念に思います。
判決公判
- 2024.5.30判決公判業務上過失致死傷罪に問われた被告3人に対する判決公判が、宇都宮地方裁判所で開かれた。
判決
3被告にそれぞれ禁固2年の実刑判決
雪崩という自然現象の特質を検討しても、相当に重い不注意による人災であった。
禁錮2年の実刑判決、この判決は望み得る中で最大の結果を得られたものだと思っております。
「相当に重い不注意による人災」、この裁判長の言葉は私たち遺族がずっと訴え続けていたものです。この事故を忘れ去ることなく、未来の世代への教訓として残すべきだとの私たち遺族の思いが伝わったように感じました。また、判決は学校活動での安全に警鐘を鳴らす画期的なものだと受け止めました。
学校現場で安全確認もなく、中止の判断基準もないまま大丈夫だろうと無謀な活動を実施することはこの判決をもってやめにしていただきたい。ただし、部活動なんてやめてしまえなどというつもりはなく、安全確認を実施した上で実施していただければという思いです。被告3教諭は裁判を通じて主張とも呼べない不合理な弁解を展開するのみでした。
この判決ではこれらの弁解を、「被告・弁護人の主張は採用できない」「主張は信用し難い」と何度も繰り返し否定し、全面否定となりました。
彼らの主張は彼らに都合のよい妄想であったと断じてもらえたと感じました。
被告側控訴
- 2024.6.12被告側控訴いずれも禁錮2年(求刑禁固4年)の実刑判決を言い渡された男性教諭ら3人が、宇都宮地裁の判決を不服とし、東京高裁に控訴した。
控訴することは予想していましたが残念です。
判決後すぐにでも控訴するものと思っていましたが、控訴期日まであと2日となってからの控訴でした。期日が迫り、もしかしたら控訴せずに終わるのではないかとの期待を持ち始めた矢先の控訴でしたので、無駄に落胆が大きくなりました。遺族に対する当てつけとして控訴を遅らせたのであれば、狙い通りの効果を発揮できてよかったですねと3教諭に伝えたいです。控訴期日が迫るまで控訴を遅らせたのは、少しでも高裁での公判の期日を遅らせようとしたのではないかと推測します。反省するでも真実を明らかにしようとするでもなく、この期に及んでなお小手先の時間稼ぎをする姿勢には怒りを通り越して呆れ返ってしまいます。
この控訴がこの先どのような影響を及ぼすかはわかりませんが、宇都宮地裁の判決は強固なもので、くつがえしようのないものだと信じています。
これ以上3教諭の悪あがきに付き合うことなく心の平穏を保ち、息子の冥福を祈りながら静かに生活していきたいと思います。