遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

大田原高校 強歩

2018年5月17−18日、大田原高校で強歩が実施されました。大田原高校の伝統行事で、夜通しで85kmの距離を生徒全員で走破します。 昨年の2017年は那須雪崩事故の影響で中止だったので2年振りの開催です。

2年前の2016年には息子もみんなと一緒に歩いていました。

2016年競歩

2年前の強歩

2年前の2016年、たった一度だけ息子も強歩に参加しました。
入学して間もない5月にこんなにきつい行事を入れるなんてすごい高校だと思いました。

強歩には麦わら帽子などの帽子が必要ということで、買いに行くかと息子に尋ねたところ「麦わら帽子はないけど普通のキャップはある。わざわざ買う必要はないよ。」と言われて「そうだな」と言ったことが記憶に残っています。


当時かぶっていたキャップ

強歩当日

当日、父兄は当番を割り当てられ、道沿いや休憩所で生徒らを見守らなければいけませんでした。うちは昼の当番を割り当てられたので、休暇を申請して仕事は休みにしました。せっかく休暇を申請したのだからと、当番を割り当てられた道沿いと休憩所だけではなく、出発の瞬間を見るために学校まで出向きました。当番と言ってもあまり負担には感じず、楽しく応援できたような記憶があります。

天候にも恵まれ、大田原市のゆるキャラの与一くんも登場して和やかな雰囲気でスタートしました。見てみるとみんなキャップではなくちゃんと麦わら帽子を被っており驚きました。その理由はあとでわかるのですが。


出発(2016)

息子は親である私たちを探すそぶりもなく、級友らと楽しそうに出発していきました。それから私たち夫婦は当番を割り当てられた地点まで移動して行進を見守りましたが、息子は通りがかってもチラッとこちらを見るだけで過ぎていきました。まあ高校生にもなったら親に対してはこんなものなのでしょう。

休憩所にて

その後私たち夫婦は帰宅しましたが、当然息子らは夜通し行進です。スマートフォンを持たせていたので、GPSを使って息子の現在地を随時調べることができました。「今ここまで進んでいるんだ」と少しずつ進んでがんばっていることがわかり、家にいながら楽しませてもらいました。

息子は無事完走し、疲れた様子もなく元気でした。ただ首筋の日焼けが痛かったようでした。「キャップだと前側しか日除けにならない。首を守るためやっぱり麦わら帽子が必要だった」と言われ、ようやくみんながちゃんと麦わら帽子を被っている理由がわかりました。「じゃあ来年はちゃんと忘れずに麦わら帽子を買って被らなきゃな。」と言ったことを覚えています。

想像しなかった未来

息子は山岳部と応援団の2つの部活動に掛け持ちで所属していました。強歩では山岳部員は登山の訓練も兼ねて重い荷物を背負って挑み、応援団員は明け方全校生徒の前で演舞を行ない、疲れている生徒のみんなを鼓舞することがこの行事での伝統だったと聞いています。しかし、息子はまだ入学したばかりの1年生だったため、重い荷物を背負うことは免除され、応援団の演舞も先輩の後ろで立っていただけでした。

きっと2年生や3年生になって麦わら帽子をかぶって重い荷物を背負って歩き、応援団で演舞を行っている自分の姿を想像していたはずです。

雪崩事故の影響で次の年の強歩は中止となり、3年生となる今年の強歩に自分はいない、そんな未来は微塵も想像することはなかったでしょう。
悲しく残念であり、悔しい思いを改めて感じます。

今年、息子の魂は強歩に挑んだ大高生のみんなと共にあったと信じたいです。

安全性

この強歩という行事、85kmという行程を全校生徒が夜通し歩き通すという危険な行事なのですが、当時見ていて危険を感じることはありませんでした。
学校あげての行事であり、先生も父兄も総出で見守り、地域の警察や住民の方々にも協力していただいているからでしょう。休憩所も数km置きにあり、怪我などで脱落した生徒を回収するため先生方も絶えず見回っていました。

もちろんたった一度だけ一父兄として見ただけなので、例えば熱中症や怪我への対策は実際どうなっているのとかはわかりません。当時から熱中症対策などに対して父兄から厳しい意見も寄せられていました。

昨今問題となっている組体操のピラミッドなどと同列に扱うべきではないでしょうが、再開にあたっては安全性と教育的効果を天秤にかけて考え直す必要はあったでしょう。

2年前は、学校から強歩の安全対策について父兄や生徒にきちんと説明してくれるようなことはありませんでした。もう部外者となってしまったのでわかりませんが、このような事故があった後の再開なのですから、今年はしっかりと父兄に安全対策について説明されているはずだと信じたいものです。

外部の目

また、最近知ったことですが、2年前の強歩の実行責任者は猪瀬修一教諭でした。那須雪崩事故を引き起こした講習会の責任者です。同じ責任者でありながら、この講習会と学校行事である強歩では安全対策に対する意識が大きく異なっているように感じます。

2年前の強歩の記録

「脱落者がいる前提で安全対策がなされている」「地域や父兄の目があり、安全性や改善点について気が抜けない」という2点が、強歩では危険性を感じさせなかった根本的な理由となっている気がします。

一方、山岳部の登山活動は、父兄や地域の目の届かないところで実施されています。他の部活と違って応援にも行けず、安全性についても外部から意見を言いにくいようになっています。通常の登山活動であればそれでも他の登山者の目もあるのかもしれませんが、高体連主催の講習会となると外部の目が全く届かず、自分たちのやり方で好きなように実施できてしまいます。長年外部の目を入れず、閉鎖的に物事を進めてきてしまったことが、同じ責任者でありながら事故を起こした講習会での安全意識の低さに繋がったのではないでしょうか。

外部のチェックをしっかりと入れることが安全性確保に必要だと強く感じます。

4月から栃木県の高校生の登山活動が再開されています。繰り返し訴えますが、その根拠となっている再発防止策は外部の誰のチェックも受けておらず、世間に対して公開されてもいません。

また、高校山岳部に所属している生徒や父兄に対して十分な説明はなされているのでしょうか?
その内容にみなさん納得して登山活動をしているのでしょうか?

丁寧な説明と対応が必要だと教育委員会には訴えています。


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