遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

弁護団結成

 昨日7月27日、那須雪崩遺族の弁護団を結成し、県と再発防止策と賠償に関して交渉していく旨を記者会見を行い発表いたしました。

 

下野新聞:那須雪崩事故で遺族の弁護団結成 栃木県側と賠償交渉、責任明確化も
毎日新聞:遺族支援へ弁護団結成 再発防止策、見直し訴え
東京新聞:那須の雪崩死亡事故 遺族の弁護団結成 県側に賠償求め示談交渉へ
産経新聞:那須雪崩 遺族の弁護団結成、再発防止策再検討を要求
NHKニュース:雪崩で高校生死亡事故「遺族抜きの再発防止策 作り直しを」

弁護団に依頼した経緯

 今年の3月11日に教育現場での事故やいじめ問題などに取り組む弁護士の先生らが集まる勉強会に出席させていただきました。部活動中の事故の弁護経験を持っておられる先生方ですので、私たちの気持ちを理解していただけ、また今後のことについて貴重なご意見を頂くことができました。
 その後数回にわたりその弁護士の先生方と情報交換をさせていただき、弁護団として弁護する用意があるとのオファーを頂き、依頼させていただくことになりました。
 すぐに訴訟という話ではありません。示談交渉を前提に、再発防止や責任の追及という点で弁護士の先生方から協力を頂くということです。
 それぞれの家族が弁護団の支援を受け、活動や示談交渉をするということになります。

訴訟について補足

 通常このような事故では「事実関係」と「事故の発生責任」について加害者と被害者の意見の相違が生まれる場合が多く、訴訟に発展しがちです。
 しかし、那須雪崩事故については、すでに検証員会によって事実関係の大枠は明らかにされており、さらに県は「県に賠償責任がある」と明言されているため、現在のところ民事訴訟に発展する可能性は低いと考えています。

再発防止策について

 栃木県教育委員会はこの冬から高校山岳部での冬山登山再開を決定しました。また、部活動主体での雪上訓練の実施可否も、登山計画審査会で検討が始まりました。雪上訓練の再開に積極的な山岳関係者を長とするこの会に雪上訓練の実施可否の決定権を委ねていることから、県教委は事実上再開を決定しているのだと考えます。何の議論も反省もないままです。
 県教委はこの事故をなかったこととし、誰も責任を取らないまま、事故以前のような活動を再開させようとしています。私たちの息子の死からも、この事故からもなんの反省も教訓も得ることがなかったということです。そんなことは断じて許すことはできません。栃木県教育委員会に反省を促すためには、8人の命では不足だったということなのでしょうか。
 彼らの再発防止策は形だけのものに終始しています。誰かが監視し、意見しなければすぐにでもこの事故は風化し、なかったものとなってしまいます。そうならないために、再発防止策そのものに意見するような組織が必要だと考えています。

冬山登山について補足

 事故を受けてスポーツ庁で開催された「高校生等の冬山・春山登山の事故防止のための有識者会議」において、冬山登山とは次のように定義されています。「冬山登山とは、主に積雪期における登山とするが、時期に関わらず、気温の変化や降雪、積雪等の気象条件による凍結、吹雪、雪崩等に伴う転滑落、埋没、凍傷、低体温症などの遭難事故が発生する可能性のある環境下で行う活動のことをいう。」
 ところが栃木県教育委員会は「低山等の積雪期にない山への登山」は冬山登山ではないと主張し、冬季の登山活動を再開するとしています。スポーツ庁の定義に従えば、降雪や積雪の心配のある時期の登山は、山の高低に関わらず冬山登山であると読めると思います。定義を読み替えてまで冬季の登山を再開しようとしており、また、その議論の内容の説明は一切ありません。
 遺族への説明は「なお、低山等の積雪期にない山への登山については、冬季においても実施を認めることとしておりますので、御承知おきください。」の一言で済まされています。
 その後、冬山登山再開についてマスコミに報じられましたが、他の報道機関が問い合わせたところ「正式に決まったわけではない」との回答があったとのことでした。遺族向けには「ご承知おきください」と言って決定したように言っておきながら、報じられると一転して否定されています。冬季が近くなってから正式に決定したこととし、ひっそりと実施するつもりなのでしょう。

雪上の講習会について補足

 雪上での講習会の再開も先日の登山計画審査会で議論が始まりましたが、山岳関係者が長であるこの会で議論すること自体、県教委は雪上訓練の再開に積極的であると思わざるを得ません。
 新聞報道によると現場の顧問らは雪上訓練の再開には積極的ではないという中でさらに議論を続ける意味が分かりません。
 このような事故を起こしておきながら、「高校生が」「部活動として」冬山登山や雪上訓練を続ける意義とは一体何なのでしょうか。
 民間の山岳の専門家が講師となる講習会参加ではいけないのでしょうか。とてもこの事故を反省しているとは思えません。

処分の見直しについて

 今回の事故に対する処分は最大でも停職5ヶ月というものでした。
 8名もの命が失われるような過失を犯しても、誰も責任を取ることもなく、現場の責任者も引率した顧問も停職が明ければ元の生活に戻ることができます。最高責任者である教育長も減給10分の1という軽い処分で済ませています。
 処分が免職ではなく、より軽い処分である停職ですんだ理由は、この事故の原因が「故意ではない」からということでした。
 これらの処分が軽すぎるとの気持ちを抑えることができません。この結果が学校安全の教訓となるとはとても思えません。
 処分そのものの見直しとともに処分規定についても見直しを要望していきたいと思います。

賠償について

 今年の年初に「賠償責任は県にある」との見解が新聞報道されました。
 賠償についても教育委員会から連絡を受けたのは一部の遺族にとどまっています。今後提示し、交渉していくと県から連絡を受けましたが、その後の進展は全くありません。
 今後、適正な賠償の実行を求めて、弁護団とともに、交渉を始めていきたいと思います。


コメント

  1. AAA より:

    何度目かですけど、「冬山」「春山」って単語は使わない方がいいと思いますよ。
    その解釈の仕方で今回の事故が起こったとも言えるわけですし。

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