遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

ガイドラインなんてどうせ守る気もないのでしょう?


栃木県教育委員会は12月18日、県立高の雪上活動を全面禁止する登山計画ガイドラインを策定したと発表しました。このガイドラインでは冬季でも、雪のない低山での活動は認めています。

引率する顧問の要件が甘かったり、冬山の定義を栃木県で独自に解釈して冬季の登山を認めるなどガイドラインの内容には稚拙でいい加減な点は残っていたりしますが、しっかりと守ることができれば一定程度の安全は確保できることでしょう。

しかし、このガイドラインを山岳部の顧問教員がしっかりと守ることはないでしょう。なぜ彼らがガイドラインを守ると信じることができるのでしょうか。

那須雪崩事故は、「冬山登山の事故防止について」という立派な通知を顧問教員が無視し、雪上訓練を強行したことによって発生した事故です。今更彼らを信じることなんてできる訳がありません。

守らなくても罰則はなにもない

この発表されたガイドラインは守らなくてもなんの罰則もありません。県教委も守らせるための努力はなにもしていません。ガイドラインを作成し、各学校の校長に通知するまでが自分たちの仕事だと割り切っています。そこから各顧問教員に通知するのは校長の仕事とのことですが、校長が職務怠慢で通知しなくてもこれも罰則がありません。

ガイドラインを守らず顧問教員が危険な行動をしたツケは、那須雪崩事故と同じく生徒の命で支払うことになっています。
こんななんの拘束力もないガイドラインを作成しただけで那須雪崩事故の再発防止策をつくりましたと言われて納得できるわけがありません。

守らせるための制度設計もないこんなガイドライン、数年も経てば事故の記憶とともに風化し、形骸化して誰も守らなくなってしまう未来しか想像できません。

そのガイドラインの中身も今まで通り責任の所在はあいまいで、事故が発生しても誰も責任をとらなくてもいいような巧妙であいまいな表現にされています。
そもそもガイドラインの名称からして「登山計画作成のためのガイドライン」と「登山計画作成のための」と前置きしてある点も県教委の責任逃れと思われます。計画の作成の指導とそのチェックまでが県教委の仕事で、実際の登山活動でガイドラインに反した行動をしても各学校の判断であって勝手にやってください、そうなっても県教委には責任はありませんという言い逃れに感じます。守らせる仕組みもなく、守らせるための努力もしない県教委の態度には事故の反省は見ることはできず、いつもながら呆れてしまいます。

事実上、ガイドラインに拘束力はない

ガイドラインにはどのような拘束力があるのか、ガイドラインを守らないことで罰則などあるのか、栃木県教育委員会に問い質しました。その回答は以下のようなものでした。

ガイドライン策定の際にはその実施及び遵守について教育長名通知として各県立学校長宛て発出を予定していることから、各学校及び教職員はその内容の遵守義務があります。
遵守違反の程度が著しい場合には職務命令違反となり処分の対象となります。

一応、ガイドラインに背くと処分の対象となることです。しかし、実態としてガイドラインに背いたことによって処分の対象となった例は皆無です。

那須雪崩事故は通知「冬山登山の事故防止について」が守られず発生した事故です。これが「遵守違反の程度が著しい」でなくて何が著しい遵守違反に当たるのでしょうか。
明確な職務命令違反があったにも係わらず遺族宅への弔問時に「違反した事実は処分の量定には反映されていない」と教育長は明言されました。事実、重大な過失により8名の命が失われたことから考えると処分は軽いものでした。通知に背いたことは何も咎められてはいないのです。

また、通知の存在すら認識されていなかったことも私たち遺族の調査によって明らかになっています。通知を周知徹底させる義務があったはずの県教委や各学校の校長の処分はさらに軽微なものであり、現実的な拘束力とはなり得ません。

実際ガイドラインや通知は守られていない

他のガイドラインや通知項目についても同じことが言えます。

部活動における熱中症対策についてはスポーツ庁や各自治体からガイドラインや通知が数多く出ています。しかし、それらは全く守られていません。気温が35℃に達するような日に、一日中冷房もない体育館で部活動がなされている実態を私は目の当たりにしています。

記録的な猛暑となった2018年の夏、栃木県においても部活動で熱中症となり救急搬送された例が散見されました

しかし、県教委に確認したところ、そのことによって処分を受けた顧問教員もいなかったとのことです。その理由を問いただしたところ以下のような回答でした。

大会等の開催にあたっては、主催者側は熱中症予防の対策を十分にとっており、故意に生徒たちを危機に晒すとこはいたしておりません。

この回答から読み取れるのは、「故意」でさえなければ何をしてもよいとの県教委のお考えです。35℃にも達する気温の中で部活動や大会を行うことが熱中症の対策を十分にとっていることになるのでしょうか。そんな中部活動を実施していること自体もはや「故意」と言っても差し支えない状態であるのではないでしょうか。

また繰り返そうとしている

遵守すべき立派な規則は50年前からあったのです。その規則を廃止して、新たな規則としてガイドラインを作り、これが再発防止策ですと言われるのは違和感しか感じられません。

制度設計がないままのガイドラインにはなんの意味もありません。規則が形骸化し、事故が発生してしまった那須雪崩事故の反省から生まれた再発防止策とはとても思えません。

立派な規則さえ作れば事故は防げるという幻想は、すでに那須雪崩事故によって崩れています。顧問教員が立派な規則を無視して危険な雪上での訓練を強行したことによって事故は発生したのですから形骸化するのは時間の問題です。この事故から一体何を反省されたのでしょうか。

無茶をしようとする顧問教員に対して規則をいかに守らせるかを考え、制度設計する必要があるはずです。それが教育委員会の仕事のはずです。県教委や登山専門部の再発防止策にはこういった視点が皆無です。部活動の顧問を事実上強要しているため教員に対して温情を与え、処分を甘くし、自分たちにも処分が及ばないようにわざとこういった視点を避けているとしか思えません。

再発防止策がこのまま制度設計もない状態で、誰も守らないガイドラインを作成しただけであるならば、重大事故は再び繰り返されることでしょう。
それが、数年後か数十年後かはわかりません。しかし今、しっかりと制度設計しておかなければ、県教委はその時の被害者に顔向けできないのではないでしょうか。どうせその時は自分は退職していなくなっているよという教育長と県教委の声が聞こえてくるような再発防止策です。

何年後であろうと再び重大事故が発生してしまったならば、その責任はこのような制度設計もないいい加減な再発防止策を策定してしまった教育長と県教委の責任です。

宇田教育長、未来の被害者に顔向けできるよう、しっかりと考えて対策してください。
お願いいたします。


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