遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

栃木県教職員の懲戒処分の基準改定

那須雪崩事故を受け、栃木県の教職員に対する懲戒処分の基準が一部改正されました。新たに学校管理下での事故に関する処分規定が設けられました。

栃木県教育委員会2019年3月19日の3月定例会において決定されたものです。

新たに設けられた条項では、過失によって児童生徒を死亡させたり心身に傷害を負わせた教職員に対し、免職を求めることができるものとなっています。

学校現場に生徒の安全に対する緊張感を持ってもらうため、この一年余りずっと要望していた改定です。報道の扱いは小さいですが、私にとっては引率教員の書類送検と同じくらい大きく感じるものであり、再発防止策に実効性をもたせるために必要不可欠な要素であると考えます。

事故から2年近く経って栃木県教育委員からようやく示された形ある再発防止策であると思います。

 

 
「栃木県教職員懲戒処分の基準」の一部改正について

(新設)
6 児童生徒に対する非違行為関係
(3) その他の学校事故
学校管理下において、過失により事故を発生させ、その結果児童生徒を死亡させ、又は心身に傷害を負わせた教職員は、免職、停職、減給又は戒告とする。

教員は安全に対する緊張感が皆無

事故が発生してからの2年間、高体連の教員や教育委員会の職員と話す機会が何度かありました。そこで感じたことは、教員には学校の安全に対する緊張感が欠けており、教育委員会もその状態を是正するつもりもないということでした。緊張感欠如の原因はいろいろ考えられますが、根本的な原因のひとつは公務員が国家賠償法によって守られているためであると考えられます。

国家賠償法第1条
1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

この法律によって公務員である教員が、職務である部活動において生徒教員を死亡させたり、傷害を負わせたりしたとしてもその損害は国や県が補償することになります。教員は賠償という金銭的な責任から逃れることができます。加えて、損害賠償請求のための民事訴訟でも被告は国又は公共団体となり、教員自身が訴えられることはありません。
また、個人としての責任が問われる刑事罰についても公務員は、「禁錮刑」以上の判決を受けなければ失職することはありません。

公務員である教員はかくも強力に守られています。これでは生徒の安全に対して緊張感を持ってもらえるはずがありません。教員は守られているからこそ内規を厳しくし、自浄作用によって自らを律するべきです。

実際、教員のわいせつ行為については即「免職」となる厳しい規定が設けられており、わいせつ行為を行った教員は教育の現場から退場し、教壇には立てなくなる仕組みが作られています。

それに対し、教員の過失による部活動の事故が起きても教育現場から退場する仕組みとはなってはいません。
安全管理に疎く、知識もない教員が安全確認もせずに部活動をして事故が発生し、生徒を死亡させたとしても免職にはならず、何事もなかったように教育現場に復帰することができます。事実、那須雪崩事故を発生させ生徒・教員8名を死亡させた教員は停職処分に留まり、すでに教員生活に復帰しています。過失によって生徒を死亡させた教員は、わいせつ行為を働いた教員と同様に教育現場から退場すべきであると思います。

緊張感のない中での部活動

このように緊張感のない中、「那須雪崩事故によって子どもを山から遠ざけてはいけない」というきれいな言葉で危険性がカモフラージュされ、雪崩に対する十分な知識もない顧問教員が雪山登山を引率することがまだ全国で行われています。

那須雪崩事故のあと、高校の部活動において雪山登山を行っている自治体の調査はされましたが、雪山登山を実施している学校の顧問教員がどのような資格をもち、どのような知識と経験を基に雪山へ山岳部部員を引率しているのかの調査はなされていません。
調査すると、十分な知識と経験がないまま雪山に引率している事例がたくさん出てくるはずです。未だに全国で高校山岳部の活動として実施されている雪山登山はこのようないい加減な状況で実施されてるように思えます。

他の部活動においても熱中症が危惧されるような高温の日でも平気で部活動が実施されています。
安全に対する知識や経験が不足しているだけでなく、安全に関するガイドラインも守られることなく部活動が実施されてるのが実情かと思います。

このように規則も守らない状態で無責任に部活動が実施できてしまっているのは、国家賠償法によって公務員である教員が守られていることに加え、過失によって生徒・教員を死亡させたとしても甘い処分に留めてしまっている教員の処分規定の基準にも問題があると考えられます。

このように教員の安全に対する緊張感の欠如は放置できない状況のはずですが、文科省もスポーツ庁も、各地方自治体の教育委員会も実効性のある対策を打ち出すことはしていません。
「ガイドラインや指針に従って安全に部活動を実施してください。」と言うのみです。現場の顧問教員がガイドラインや指針を守ることがないことを理解した上でそう言っているのですから悪質極まりない状況です。


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