遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

2017年3月27日に発生した那須雪崩事故の遺族・被害者の会のホームページです。

那須雪崩事故は死亡者8名、重軽傷者40名の学校管理下では最大級の事故でした。

那須雪崩事故について

県教委の再発防止策説明会

説明会

 7/5(木)18:30から大田原高校にて、那須雪崩事故遺族・被害者の会向けの再発防止策説明会が開催されました。2時間余りの会でした。
 遺族から県教育委員会には3度説明会の開催を要望させていただきました(1度目2度目3度目)。3度も要望してようやくの開催です。県教委はなぜこのように誠意のない態度を続け、密室で作業しようとするのでしょうか。理解に苦しみます。

 事故防止に対する施策は大まかには2点で、「顧問の資質向上のため、顧問には登山研修や安全研修をたくさん受講してもらう」「危機管理のためのマニュアルを整備し、充実させる」ということでした。顧問の資質向上もマニュアル整備も大切な対策ですが、これだけで十分と言えるのでしょうか。大いに疑問を感じます。

 事故は「知識も経験も豊富と言われたベテランの山岳部顧問」によって引き起こされました。そのベテランの山岳部顧問らが慣れと驕りによって「冬山登山を原則禁止とした文科省の通知も、冬山登山に関する通知も守らずに」雪崩事故が発生しました。
 何もわからない先生が研修によってベテラン以上になるのでしょうか?マニュアルを作るだけで顧問の先生方がそれを遵守する保証はどこにあるのでしょうか?そんなことだけで事故は防げないことをこの事故が証明しています。

 この事故から何を教訓としたのでしょうか?このような凄惨な事故を引き起こしていながらまだそんな性善説に基づいて作成される再発防止策に事故の教訓を感じることはできません。

 報道

説明された内容

 説明された再発防止策の内容は、検証委員会からの提言に基づき「那須雪崩事故を教訓とした学校安全のための取組」を発表し、その内容を具体化した施策を実行していきますということでした。

施策

 具体化した施策は資料2、3で説明されました。大まかに言うと2点で、「顧問の資質向上のため、顧問には登山研修や安全研修をたくさん受講してもらう」「危機管理のためのマニュアルを整備し、充実させる」ということでした。

 また施策を読み解くと、数々のマニュアルを作成し、顧問の先生に講習を受けさせれば今まで通りの登山活動が実施でき、慣れた県内の山であれば単独で引率もできることになっています。
 県外の山に登山する場合は登山ガイドなどのアドバイザーがつくことになっていますが、県内の山ではそういった措置はありません。

 この事故は「知識も経験も豊富と言われたベテランの山岳部顧問」によって「県内の山」で引き起こされました。その反省に立ってなぜこの結果なのでしょうか。何十年も講習会に使用された慣れた山だからこそ起きた事故であったはずで、慣れた県内の山だから大丈夫だなどとどの口が言うのでしょうか。あれだけの事故を起こした後なのになぜそんなにまで顧問の先生方を信じることができるのでしょうか。

 また、登山計画審査会の機能強化として県外委員を1名追加するとあります。

 実際に開催された登山計画審査会では隣県の登山専門部の専門委員長が審査に加わったとのことでした。今回の事故を起こした講習会の責任者は、栃木県の「専門委員長」でした。「専門委員長」なる役職に何の専門性もないことを栃木県が自ら証明しているにも関わらず隣県の「専門委員長」を招へいするそのセンスには怒りを通り越して呆れてしまいました。

 言いたいことはまだありますが、全てにおいてこのような状態で、どの項目も専門家の意見を聞いたり教育委員会の中でしっかり議論されたようには思えません。
 検証委員会から出された提言を、真意を理解しないまま形式的に実施しているだけとの印象しか持つことができません。

検証委員会の提言

 事故を検証していただいた那須雪崩事故検証委員会には感謝しています。事故の事実関係を整理していただき、最終報告書にはこの事故には予見可能性があったという踏み込んだ記述までしていただきました。また、検証を主導いただいた戸田委員長には私たち遺族を気遣ったお言葉やご対応をいただき、良いお人柄を感じ、心強く思ったものです。

 しかしそれでも、最終的な検証委員会の提言には不満を感じざるを得ません。そこでは幅広く学校安全全体への提言がなされていました。志の高い今後の指針となる提言ではありましたが、抽象的な表現で、今後の登山活動や部活動での具体的で実践的な施策は書かれていませんでした。

 「志の高い立派な提言ですが、この提言を消化し、実践的な再発防止策を策定する能力は栃木県教育委員会と高校体育連盟にはありません。無理です。もっと具体的な提言をしていただきたかった。」検証委員会の最終報告の場で戸田委員長にそう申し上げました。その不安は現実のものになりつつあります。

 なにより検証委員会ではなぜか登山専門部の顧問らが「冬山登山の事故防止について」の通知を守らなかったことが全く問題視されませんでした。

 個人の責任を追及しないとの理念の基の検証なので触れなかったのかもしれません。しかし、これではあんまりだと感じます。通知を守らなかった原因の調査や、通知を守らせるための提言なくして何の再発防止策でしょうか。

 その結果、マニュアルやガイドラインを作り教育さえすれば顧問はそのマニュアルを遵守し、事故が防げるという性善説に基づく骨抜きの提言になってしまっています。しっかりとマニュアルを遵守するそんな立派な顧問は、この事故の検証の中では登場していません。提言はこの事故を教訓としたものにはなっていません。

密室での作業

 また、今回説明された再発防止策は今まで方針も内容も進捗も何も説明されてこなかったものです。遺族から県教育委員会には3度説明会の開催を要望させていただきました(1度目2度目3度目)。3度要望してようやく開催していただくことができました。要望をしていなければこのまま何もせず有耶無耶にしていい加減な施策と対応で終わっていたことでしょう。

 これだけ要望してようやくです。「那須雪崩事故を教訓とした学校安全のための取組」についてなどと銘打って再発防止を進めているのですから、遺族・被害者だけではなく、登山部に属する生徒とその父兄、さらに県下の学校に通う生徒とその父兄に向けて再発防止策の内容と進捗を説明する必要があるのではないでしょうか。なぜ、遺族から何度も要求してようやく渋々と説明されるのでしょうか。しっかりとした再発防止策を策定されているのであれば胸を張って堂々と説明していただくだけかと思いますが、コソコソと密室で作業されているように見受けられます。よほど人には見せられないいい加減なものなのではないか心配になります。

 教育委員会の中でも十分な議論がなされているようには見受けられません。検証委員会の提言を形式的になぞっているだけにしか見えません。

 もっと広く、オープンに議論し、専門家や一般の方々の意見を取り入れるべきです。

 まずは山岳部の活動を、そして次に山岳部の活動だけではなく、部活動や学校事故を防ぐためにどうすべきか広く継続的に議論され、その意見が反映されるような施策を望みます。

 しっかりとこの事故の教訓を残してください。息子らの命を無駄にしないこと、それだけが遺族の望みです。


コメント

  1. smith より:

    7月7日に、経験が浅い教員に対する研修があったとの報道がありました。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180707/k10011520591000.html

    納得できない点が2つあります。
    1.個人山行を重ねることができない経験のないような教員に
      座学の研修をして、何の意味があるのか?
    2.雪山の登山をするかはっきりさせない状況において
      なぜ、高校生に対して、ビーコンの研修を受けさせたのか?

    県教委には、登山の専門性はないわけですから、
    このおかしな動きは、登山研修所講師の肩書きで関わっている方の
    県教委に対するアドバイスと考える他、ありません。

    ブラック部活と同じにみえます。
    改革への道筋への最大の障害になっているのが、
    これまでそのスポーツを熱心にやってきている現役の教員、という意味で。

    外部専門家を交えた、公開の場での議論が必要に思います。

  2. Harry より:

    再発防止策以前の話。
     登山部の顧問を責任持って努めようとするなら、顧問はただ歴が長いだけの自称ベテランでは無く、本格的に登山を行っている必要が有ると思います。もし、そのような教師が学校に居ないのであれば、外部から本物の登山指導者を顧問に雇うべきと考えます。ここで言う本格的な登山とは、道が整備され、道標があり、市販のコースガイドに載っている登山道を歩くのではなく、地形図とコンパスで自ら進路を見出し、時には登攀装備と技術を用いて登る登山を指します。厳冬期の雪山登山もこれにあたります。
     一般登山道しか歩かないから、そんな必要は無いのでしょうか? それは違うと思います。ある意味安全が担保されている状況でしか行動をしていなかったら、危険に対する感覚が養われません。というと言い過ぎかもしれませんが、実際に危険な目に合わないと見えてこない事は多々あります。
     初めは裏山の低山ハイキングからスタートして、低山の縦走、アルプスなどの高山、バリエーションルート、沢、岩峰、岩壁、雪山、などとステップアップしていこうと思った時、自ずと自分の知識や技術に疑問を持ち、今何が必要かと考え、各種講習を受け、それを実践で身に付け、自分の望む山を目指すのだと思います。それでも経験を積む過程では危ない目にも会います。その時、知識と実力と経験が有事に対応できなければ、事故となってしまう事もあるでしょう。
     自分から望んで実力アップに取り組むならば、スキルアップも見込めますが、傍から言われて、受けるような講習会などなんの意味もありません。「再発防止策」の中には、どこどこの研修を受けさせます。などと書かれていましたが、それ以前の問題でしょう。
     座学だけどれだけやっても、自然相手には通用しないと思います。知識として知っていれば、知らないよりはましですが、活用できなくては逆に危険な事にもなりかねません。自然の中ではマニュアルとは正反対な事も起こりえます。
     部活動は教員のレクリエーション活動なのでしょうか? 教育の1つと考えるなら、ハイキングレベルを超えた山登りを目指すなら、しっかりした専門的な知識と経験を持つ指導者と体制が必要だと思います。