高校登山の安全対策を巡り、県と県教委が共同設置した「高校生の登山のあり方等に関する検討委員会」の初会合が2019年10月25日に開催されました。
私たち遺族も3名、委員としてこの検討委員会に参加いたしました。
結果として、今回は問題提起のみで、私たちが望むような十分な議論はできませんでした。 しかし、高校の山岳部の活動を単なる登山としてではなく、部活動として、学校の活動としてどうあるべきか問題提起はできたと思います。
今後も継続して議論することが重要だと感じました。 粘り強く続けます。
特徴的な委員会
今回開催されたこの検討委員会には、今までの学校事故の再発防止を検討する委員会に見られない以下のような特徴があります。
- 教育委員会と知事部局の共催としている
- 遺族が委員として参加している
- 学校事故を取り扱っている学識経験者、弁護士の方が議論を主導している
- 当事者団体である高体連や教員を委員から外している
学校の安全に対して行政も責任を持ち、意見するという意味で知事部局が開催に関与しています。議論される委員にも行政側の方が参加されています。
教育委員会だけではなく行政側である知事部局がこの委員会に関与する意義は大きいと思われます。委員会の冒頭では栃木県知事からの挨拶があり、行政側の関与を示されました。
また、那須雪崩事故を引き起こした当事者団体である高体連や登山専門部は委員ではなく、オブザーバーとしての出席とし、議論には参加しないこととなっています。当事者の都合ではなく、どうあるべきかという理念から議論するために必要な措置でした。
再発防止のため、このような委員会を準備してくだたさった栃木県教育委員会および知事部局の皆さまに感謝いたします。
発足に至るまでの過程は困難なものでありましたが、結果として私たち遺族側の意見を大幅に取り入れて頂き、高校の山岳部はどうあるべきか、しっかりと議論できる陣容になっていると思われます。
今まで全国で学校事故の検証に第3者委員会が作られ、数々の再発防止の提言がなされてきました。しかし、それらの提言を実行するにあたっては、外部の目は入らず、実際の対応はすべてが教育委員会や学校内といった内輪で決定され、形式的なものになりがちでした。
実際、栃木県教育委員会から打ち出された再発防止策である「那須雪崩事故を教訓とした学校安全のための取組」は、私たち遺族の目から見ると表面的でお粗末なものでした。(その詳細は別記事で述べています)
この委員会でしっかりと理念から議論し、表面的ではない対策を打ち出すべきです。
遺族からの問題提起
私たち遺族からは、安全性が顧問教員の力量に委ねられているなど、高校山岳部の「特殊性」を指摘いたしました。そしてその特殊性を可能な限り解消し、特殊性を解消する努力を今後も続ける覚悟がなければ山岳部を継続させるべきではないと意見しました。
委員として参加した3遺族はそれぞれの意見をまとめ、この委員会で配布させていただきました。以下に添付いたします。
今後への期待
今回の委員会では私たち遺族が意見表明しただけで終わり、否定的な意見は出なかったものの議論が深まった訳ではありません。その結果だけをみると肩透かしに終わり、現状の再発防止策に対する私たち遺族のフラストレーションのガス抜きとしてしか機能していないようにも思えます。
しかし、全国的に見ても稀で特徴的な委員会を発足することができました。
まずその事実を第一歩として、焦らずその意義を育て発展させていくことが重要かと思いました。
学校の活動としての高校生の登山活動がどうあるべきか、次回以降議論が深まるよう努力していきます。
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