遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

選択肢がない危険


新型コロナウイルスの蔓延による感染防止を目的とし、在宅勤務を続けている企業がたくさんあります。私の勤めている会社でもその取り組みは続けられています。

全員が出社すると社員同士の距離を保つことが難しくなるため、現在では「社員出社率OO%以下」といった指標でリスク低減を図っています。書類作成や電話やメールでのやり取りは在宅で済ませ、会議もWEB会議を実施し、できるだけ在宅での業務で支障が出ないようにしています。どうしても出社しなければいけない用件がある場合は出社する日時を社員同士で調整し、出社する人数が重ならないようにして「出社率」という指標を守るようにしています。

出社することや在宅勤務をすることを目的とするわけではなく、その時々の状況に応じて勤務形態を選択し、全体として出社率をコントロールし、新型コロナウイルスの感染防止に努めています。出社率の指標を低くするなどのコントロールによって、再び市中に新型コロナウイルスが蔓延したとしても、感染防止をしつつ業務を停止させない体制を構築しつつあります。

教育現場ではそのような取り組みはなされないのでしょうか?
遠隔授業などの手法を取れば感染防止をしつつ、教育の機会を確保できるように思えますが、そのような体制となったとの話は聞きません。

3ヶ月程度の休校期間を経て遠隔授業などの取り組みもないまま6月に入り、学校が始まりました。再び市中に新型コロナウイルスが蔓延するような感染の第2波が来たとしたら再び学校は休校するしかなく、なすすべもなく子供たちの教育の機会は奪われてしまうのではないでしょうか。

学校の再開

新型コロナウイルスの蔓延によって休校していた学校が再開しました。栃木県でも6月に入り、通常登校が始まっています。各学校は栃木県教育委員会の示した指針に従い学校を再開し、部活動も実施できることとなっています。
新型コロナウイルス感染症に係る県立学校の対応について
http://www.pref.tochigi.lg.jp/m04/r2koronataiou.html

感染のリスクはゼロではなく、「こうすれば100%大丈夫」と誰も言うことはできません。
そういったリスクを取ることを迫られた中で何を守り、何を優先するかによって、その組織の考えをうかがい知ることができます。

助走なしの再開

学校再開にあたって栃木県教育委員会から出された指針は、できることをやるとだけ示されただけのものであるように思えます。「できるだけ距離を取って消毒をマメに実施してください」というだけで、感染予防のために何を守るのか定量的な指標は何もありません。

唯一身体的距離の確保については数値の記載がありますが、「できるだけ2m程度 」「1mを目安に」などのあいまいな表現で、通常登校では1教室に 40 人程度を入れてよいことになっています。これで十分な距離は保てるのでしょうか?
「まあ、守れないだろうけどできるだけ気を付けてね。」と言っているようにしか思えません。

そんな中でも6月から学校は再開しました。

学校を再開させるにあたっては感染が拡大しないか確認しつつ、非常事態である学校の休校状態から少しずつ活動の幅を広げて行くべきだったかと思います。そういった考えの下、緊急事態宣言の解除後の5月中は分散登校を開始して登校日数を徐々に増やし、6月の本格再開後に授業時間を徐々に増やしていくのかと思っていました。

しかし、5月中の分散登校は、ほんの数日のみの登校で終わりました。
そして6月に入ると急にクラス全員がフルに登校し、授業も遅れを取り戻すべく午後までフルに授業時間が設定されました。

休校から助走なしでフル活動に移っているように見えます。

登校するしかないのか? 他に選択肢はないのか?

子供たちの学習は経済活動と同様に停滞させることによるダメージが大きな活動です。
一定のリスクがあったとしても停滞させるべきではなく、実施すべき活動です。
学校の再開そのものに異論はありません。

しかし、再開と同時に助走なしで急にフル活動とするのは違和感を感じます。

完全な休校と、全員が登校するフル活動の2択しかないのでしょうか?
感染予防対策としてもっとできることはあったのではないでしょうか?

遠隔授業など、在宅のまま授業を受講し、学校に通う生徒の数を減らしてリスクを低減する検討や努力はなされないのでしょうか?感染に不安を抱える生徒は欠席扱いにしないなどの配慮はあるようですが、出席しない生徒へ教育の機会を与える配慮はなされていないようです。

必要なのは「欠席扱いにしない」などの配慮ではなく、「登校できなかったとしても教育を受ける機会を奪わない」ことではないでしょうか。

この3ヶ月の休校期間に学校や教育委員会は一体何をしていたのかと言いたくなります。
学校や教育委員会はもっと柔軟に対処し、生徒や父兄の不安を和らげ、それでいて教育を受ける機会を奪うことのない選択肢を用意するよう努力をすべきです。

選択肢がない危険

今回のコロナウイルスへの対応において一般企業は感染予防措置をしつつ業務を途絶させないための工夫をしてきました。在宅でリモートワークをしたり、遠隔で会議を開催したり、出社人数を絞るなど。また、英会話学校のような高校や中学校と比較して小規模な学校が遠隔授業を取り入れて授業を継続していると言った話も聞きます。

このように一般的にはいろいろな選択肢があり、出社や登校をしなくても業務や教育を実施できる環境が用意されています。それなのに、中学や高校といった学校の中に入ったとたんに選択肢がほとんどなくなってしまいます。

今回の場合で言えば学校を再開するかしないか、生徒は登校するかしないかしか選択肢は与えられていません。登校せずに授業を受ける選択肢はなく、学校を再開することだけが目的となってしまっているように思えます。生徒全員が登校する以外の選択肢はないのか検討していただきたいと望みます。

生徒全員の登校にこだわるこのような教育現場における硬直した考えと選択肢のなさが、生徒や教員に無駄なリスクを背負わせ、危険に晒すことになります。

今のままでは感染に不安を抱えていたとしても生徒は登校せざるを得ない状況です。また、多少の体調不良があったとしても教育の機会を得るためには無理をしてでも通学せざるを得ません。
これでは何のために学校を休校としていたのかわからなくなります。遠隔授業などのシステムがあれば、このような無駄なリスクを低減しながら、教育の機会を得ることができたはずです。

そして現在の状況のまま感染の第2波が来たとしたら、休校以外の選択肢はなく、生徒の教育を受ける機会はなすすべもなく再び奪われてしまうことでしょう。

6/17追記
寝屋川市のように登校を控える生徒に選択肢を与える自治体も出てきています。

異常事態への対応

なぜ、私が那須雪崩事故と関係のないコロナウイルスへの対応や遠隔授業について述べているかというと、このような学校における選択肢の狭さと柔軟性のなさが事故発生の大きな要因の一つであったと考えるからです。

事故のあった日は3月の終わりに平地でも降雪があるような異常な気象でした。講習を中止し、すぐに引き上げて帰宅する判断をするのが普通だと思います。実際私は当日の天候を見て訓練は中止され、息子はすぐに帰ってくるだろうと思っていました。

そんな中、教員たちは訓練実施の判断をして雪中歩行訓練は強行され、那須雪崩事故は発生しました。その当日の判断について講習の責任者であった教員に尋ねたことがありました。

私: 「なぜ、単に講習を中止として帰宅しなかったのか?」
教員:「迎えのバスの時間が決まっており、それまでの時間何かする必要があった。」
私: 「バス会社に連絡して迎えの時間を変更する検討はしなかったのか?」
教員:「(少し驚き)そんなことは全く考えなかった。」

迎えのバスを待つ間の時間つぶしのための訓練で、息子らは命を奪われました。
異常な天候に遭遇しても迎えのバスの時間にこだわり、予定を変更せず、講習を強行してしまったのは、学校特有の選択肢の狭さと柔軟性のなさが大きな原因の一つだったと思います。

そして新型コロナウイルスという異常な事態に遭遇しても生徒全員が登校し、通常の形態の授業にこだわる対応は迎えのバスの時間にこだわる教員の対応と重なるものを感じます。もし同じ状況に陥ったとしたら、再び迎えのバスの時間にこだわり、講習を強行する姿が想像されます。

教育現場の体質は事故前と変わりません。いくら小手先の対策をしたとしてもこういった旧態依然とした体質が変わらない限り、今後も同様の事故は繰り返されるのではないでしょうか。

部活動の再開について

6月から学校は再開し、部活動も同様に再開しています。
その活動時間については指針の中で「長時間の活動は避ける。」とだけ記載があります。これでは学校再開後の6月にすぐにフルスロットルで部活動を実施する学校があってもおかしくありません。

感染のリスクがゼロではない非常事態においては、何を優先すべきかを明確にしてリスクをできるだけ低減すべきです。学校で優先すべきことは授業や教育課程の活動であり、教育課程外の部活動は優先すべき活動ではありません。授業や教育課程の活動が軌道に乗ったあとで徐々に開始するのであれば納得はできますが、学校再開と同時に部活動を再開するのはどうかと思います。

それでも生徒や高体連のような実施主体が部活動に前のめりになるのはある程度仕方のないことだとは思いますし、その思いはできるだけ汲むべきだと思います。しかし、教育委員会や学校が部活動を授業のような教育課程にある活動と同等に扱い、前のめりになるのはおかしいなことなのではないでしょうか。部活動は教育課程外の活動なのですから。

感染の第2波への備えもなく、教育活動が軌道に乗る以前に大会開催に前のめりになることはあってはならないことなのではないでしょうか?

高校野球については栃木県高野連独自の公式戦として加盟校61校が参加して試合を実施することが決定しました。学業に支障を来さないことを考慮したため短い日程の中で実施されるとのことです。日程の都合で真夏日に試合実施を強行し、生徒を熱中症の危険に晒すようなことがないよう願うだけです。

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