遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

部活動再開に対する懸念


コロナウイルス対応の緊急事態宣言の解除を受け、栃木県は外出自粛要請や店舗や商業施設への休業要請の緩和を宣言しました。

同時に5月末まで予定していた県立学校の休校期間を前倒しし、5月25日から再開し、5月中は分散登校、6月からは通常登校とするとしました。そして部活動も6月から再開することとしています。

部活動は再開を急ぐべき社会活動なのか?

学校活動の中でも授業などの教育活動は再開を急ぐべき社会活動の一環ととらえることができます。経済活動の自粛要請の緩和などと同様の基準で再開することに違和感はありません。リスクをできるだけ小さくし、一定の再開基準と活動指針を示して許容リスクを明確にした上で速やかに再開すべきです。

しかし、部活動が授業などの教育活動と同列に扱われ、6月から再開されると宣言されたことについては違和感を感じます。

部活動そのもののリスクやそのそれぞれの競技特有のリスクがある中、授業再開と同様の基準で部活動を再開してもよいものなのでしょうか?

そもそも部活動は「教育課程外」の活動であり、学校において必ず実施されるべき事項ではありません。それほど拙速に再開を急ぐべき社会活動なのでしょうか?

「教育課程外」の活動である部活動によってコロナウイルスの感染が拡がり、そのために「教育課程」にある授業などの学校において実施されるべき活動が止まってしまうことはあってはならないことです。
ちゃんと安全性や部活動再開の必然性は議論はされた上での判断なのでしょうか?

インターハイが中止となったことを受けて教育長は「県内での大会などの要望があれば、高体連や中体連とも相談して考えたい」と述べられたそうです。この想定されている大会を8月中に実施する前提で準備や練習実施の日程を逆算して6月から部活動を再開するという日程を決めたのではないでしょうか?この拙速な部活動再開の判断は安全よりも大会運営の都合を優先しているように思えて仕方ありません。

部活動に対する生徒の思いを汲むことは大切なことです。しかし、感染拡大防止はどのように行い、どのような指針をもって部活動を再開するのか、そしてどのような対策をもって大会を実施するのかまるでわかりません。

部活動再開によってコロナウイルスの感染が拡大すればそれだけで大変なことです。さらにそのことによって学校活動が休止に追い込まれ、教育活動が阻害され、生徒らの大学進学などの進路に影響が出るようなことはあってはならないことです。

学校の本業はなんであるか考え、何を優先すべきか判断すべきです。

しっかり考えて再開を判断して欲しい

インターハイが中止となり、通常の部活動すらままならない中、部活動に打ち込んでいた生徒らの落胆の気持ちはよくわかります。その気持ちを汲んで部活動を再開したり、独自の大会を開催しようとする意向が働くこともわかります。

しかし、部活動には大人数が一カ所に集まったり移動が伴ったり通常の学校活動とは異なるリスクがあります。また、生徒同士の接触が避けられないなどそれぞれの競技特有のリスクがあります。それらのリスクを認識し、しっかりとした基準と競技団体ごとの行動指針を定めた後に再開を決定して欲しいと願います。

栃木県教育委員会の中で、それらのリスクに対する考え方を議論し考えて部活動再開を決定されていると信じたいものです。しかし、那須雪崩事故を引き起こしてしまうまでの経緯と安全軽視の考え、明確な再発防止策もないまま県立学校の登山活動を再開した実績、登山活動の恣意的な活動範囲拡大と安全基準の緩和など、今までの栃木県教育委員会と高体連、現場の教員の対応を考えるととてもそのようなことまで考えて再開を決断したとは思えません。

「そんなこと言われなくても対策は考えていて、競技団体ごとの行動指針なら今作っているよ」と言われるかも知れません。3ヶ月も活動休止していたのですからさすがにそのくらいは作成していることだと信じたいものです。
だとしたらなぜそれは公開されないのでしょうか?そしてなぜそのような指針が公開されないまま部活動再開だけが先行で判断されているのでしょうか?この3ヶ月間、県教委や教員の皆さまは一体何をされていたのでしょうか?

そしてまた、そのような行動指針が作成されていたとしてもまともな内容だとはとても思えません。那須雪崩事故を受けて作成された各競技団体ごとの安全指針を記したはずの「危機管理マニュアル」は、熱中症対策すらまともに記載されていない表面的でお粗末な出来のものでした。

プロの競技団体ですらまともに練習を再開できていないこのご時世に、このようなお粗末な危機管理マニュアルしか作成できない栃木県高体連や栃木県教育委員会がしっかりとした競技団体ごとの行動指針を作成できるとはとても思えません。

そんな中で部活動を再開して感染拡大を防止し、安全は確保できるのでしょうか?

再開するなと言っているわけではない

私は部活動を再開するなと言っているのではありません。
市中でのウイルス感染が一定程度収束し、許容リスクを明確にし、しっかりとした基準と行動指針を定めた上であれば部活動再開は大いに結構なことかと思います。

しかし、本業である教育活動の再開も軌道に乗らない現状で、基準も行動指針もないまま「子供たちのために」といった綺麗な言葉だけで簡単に再開を決定すべきではないと思います。

なぜ基準や行動指針もないまま拙速に部活動再開を判断するのでしょうか?
部活動の再開は教育活動の再開が軌道に乗ってからでよいのではないでしょうか?

部活動は「教育課程外」の活動であり、学校において必ず実施されるべき事項ではないのですから。

また、再開するのであれば再開の判断の根拠と誰が責任をもって判断したのかを明確にすべきです。そして、対策の不備や再開の判断の甘さによって感染が拡大してしまった場合には、その方が責任を取るべきです。そうでなければ緊張感は保てません。

安全を軽視して事故が発生し、誰も責任をとらないまま有耶無耶にされ、実効性のある対策がとられないまま事故が繰り返されていることは、過去の歴史が証明しています。

何度同じことを繰り返すつもりなのでしょうか?

現場の教員は何も判断しない

学校に子供を預ける親の皆さんは、「学校や現場の顧問教員がしっかりと対策し、安全を確保してくれるはずだ」と信じているかもしれません。

しかし、学校や教員が疑問を持たずに今まで通りに部活動を実施してしまうことは目に見えています。国や県が「やってもいい」とお墨付きを与えたら学校や教員は「県と教育委員会がいいと言ったから」となにも考えずに活動を再開してしまいます。

もちろん、しっかりと対策をとる教員が大半でしょうし、安全を重視して指針が明確になるまで部活動開始を見送る教員などもいることでしょう。だけど安全を軽視し、安全よりも部活動や大会の運営を重要視している教員が一定割合いることも事実です。また、そこまで部活動優先の考えをもっていなかったとしても、県教委の判断を鵜呑みにして何も考えず、安全を軽視して行動する教員も数多く存在しています。

以前、教員が県の判断をそのまま鵜呑みにして行動してしまうことに驚いたことがあります。
那須雪崩事故後の2017年の夏に、ある高校登山部の顧問の教員と話をする機会がありました。
その方は2017年3月の那須雪崩事故後の夏に栃木県立高校で登山活動が再開されたことを以下のように言って驚いていました。
「事故の検証委員会がまだ開催されており、事故の検証が済んでおらず、再発防止策が明確になっていない中で学校での登山活動が再開されるとは思っていなかった」と。
しかし、「それでも県教委が許可したのだから、私が顧問を務めている山岳部でこの夏登山活動を実施し、山に登った。」とも言われました。

私は県教委が示した再発防止策は不十分であると感じていたので、「ご自身の中で、どのような対策によって安全が確保でき、登山活動を実施してもよいと判断したのでしょうか?」と問いただしました。しかし、その教員からは「県教委が許可したから実施した」以上の答えはありませんでした。

結局「こうすれば安全が確保できて大丈夫」という自立した判断ではなく、「県教委が許可したから」という他人任せの判断基準しかその教員は持ち合わせてはいませんでした。自身の判断やなぜそれで大丈夫かという根拠を考えることはなく、上位にある教育委員会の判断を鵜呑みにするだけしかできないようでした。

那須雪崩事故という大事故を引き起こした当事者である栃木県の教員の発言とは思えませんでした。そして、これが現場の教員の共通の感覚なんだと愕然としました。
この上位の判断を鵜呑みにする判断基準は現場の教員の共通の感覚であり、過去から変わらることはなく、今後も変わることがないのだろうと思います。

このような判断しかできない現場の教員に何かを期待することはできませんし、子供の安全を考えるならばご自身で安全を判断すべきです。

誰も責任をとらない

学校や教員は「県と教育委員会がいいと言ったから」と言って部活動を再開するのでしょう。
そして、同様に栃木県教育委員会は「国がいいと言ったから」と言って部活動の再開を許可したと言うのでしょう。

これでは部活動を再開し、感染拡大が発生した場合は誰が責任をとるのか不明確なままです。

県が責任をもつ事業であれば、責任者は県知事であり、失態があれば辞任に追い込まれるか、そうでなくても選挙で落とされ責任を取ることになるでしょう。
しかし、政治からの教育の独立性を担保するとの思想の下、学校の事業の責任の主体は県知事ではなく教育委員会や学校となります。そして、教育委員会の教育長や職員、学校の校長、教員は強固に立場を守られた公務員です。実際、那須雪崩事故を引き起こして8名もの命を奪ったにもかかわらず、関連する栃木県の教員や職員は誰も責任をとることもなく日常生活に戻っています。

もし部活動を再開してコロナウイルスの感染が拡大したりしても誰も責任を取ることはないでしょう。

再開にあたって誰かが「自身の進退をかけて再開を決定した」とまで言ってもらえるとよいのですが、誰もそのようなことを言う方はいらっしゃらないです。

部活動を再開するという県教委の判断を鵜呑みにするのではなく、生徒や父兄は自らで安全を判断し、自身で部活動を再開するかどうか見極める必要があるかと思います。

そうでなければ安全を確保することはできないでしょう。

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