遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

学校における働き方改革の答申に対してパブリックコメントを送付いたしました


文部科学省初等中等教育局財務課が「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申素案)」に関する意見募集を実施しました(すでに締め切られています)。要は学校における働き方改革への意見を募集していたということです。
 文科省に意見できる貴重な機会なので、忙しい教員が専門家の力を借りずに登山を引率するのは困難であることを意見させて頂きました。きっと反応もなく、答申に対する影響も軽微なものであるはずですが、意見せずにはいられませんでした。
 以下、意見募集に対して送付した意見です。

 
私は2017年3月27日に栃木県那須町で発生した那須雪崩事故で死亡した生徒の父親です。
教員の負担軽減と生徒・教員の安全確保を目的として、山岳部等の部活動への教員の係わり方について意見させていただきます。
 
山岳部の活動は顧問教員の資質が生徒の命や身体を守る安全性に直結しており、教員に過度の責任と負担を強いるものです。このままの状態で続けるべきではないと考えます。
 
過去及び現在の山岳部の活動状況は、顧問教諭の経験に頼り惰性で登山活動が行われている状態です。生徒・教員の安全が確保された状態で実施されていません。
 
全国の山岳部・登山部の大幅な活動縮小、もしくは活動を継続するのであれば山岳ガイドなどのプロの帯同を必須とするなどの安全確保措置を徹底し、顧問教員の負担軽減と生徒・教師の安全を確保するよう意見させていただきます。
 
この意見は教員の働き方改革の趣旨にも合致するものであると考えるので、こういった場で意見させていただいております。
◆教員が登山の経験と知識を得ることは困難
山岳部顧問教諭の職務となる登山の引率は、登山の経験と知識がものをいうものであるとのことです。
しかし、授業が本務である教員が登山の経験を積み、講習会等で安全確保のための知識を得て一人前の登山引率者になることは時間的に困難であることは明確です。
 
趣味で登山をしている教員などであれば私的な休日の時間を利用したり、それこそ部活動での登山活動の頻度を増やすことで経験を積むことは可能かもしれません。しかし、それをすべての顧問教諭に強要することは本答申の趣旨に反することであろうと思われます。
 
また、他のスポーツ競技では試合等で活動内容が保護者などの外部者の目に留まりますが、登山活動は部活動であっても山域で実施されるものであり外部者の目に留まりにく状態です。それ故独りよがりで中途半端な知識と自信を身に着けた自称ベテランの顧問教諭が生まれやすい土壌を作り出してしまう点も安全性の面から問題であると考えられます。
 
このような状態で山岳部顧問教諭の引率の下、生徒・教員の登山活動の安全性を担保し、命と身体の安全を確保するのは困難であると言わざるを得ません。
◆教員にとって過重な責任を負わせてしまう
山岳部・登山部は、引率する教員にとっても生徒と自身の命の確保という過重な責任を負わせてしまう部活動です。
登山の経験もない初心者の教員に生徒の引率をさせ、その教員が那須雪崩事故で亡くなっている事実を真剣に受け止めるべきです。部活動における顧問教諭の役割を現状から変え、過重な責任を負わせるべきではありません。
◆山岳会との結びつき
高校の山岳部顧問は地元の山岳会への人材供給の役割も担っています。顧問教諭らは部活動で登山経験を積み、山岳会の役員に就任する等の貢献も期待されています。現に栃木県山岳連盟の現会長は、山岳部顧問を経験した元高校教員です。
教師の本務からかけ離れ、部活動における生徒の活動からも関係のないこのような役割を担うことはあきらめ、教員の負担や責任を軽減すべきであると考えます。
◆安全の通達が周知されていない
過去に栃木県教育長から各高校長や市町村教育長らに宛てて出された「冬山登山の事故防止について」という通知があります。この通知が周知されず、守られることがなかったことが那須雪崩事故発生の大きな要因のひとつとして挙げられます。
 
この通知の存在は、山岳部・登山部がある学校の校長ですらほとんど認識していませんでした。また、その通知を守るべき山岳部顧問は栃木県内のほぼすべての教員がこの通知の存在を認識していなかったことが那須雪崩事故遺族が学校教員に対して行った調査結果から明らかになっています。
 
この調査結果から、通知やガイドラインに頼って部活動での安全を確保することには限界があり、生徒の生命・身体を守るためにはより抜本的な改革が必要であることが明確になったと考えられます。小手先の通知やガイドラインだけで事故防止を図った気になるべきではありません。
◆那須雪崩事故について
那須雪崩事故は組織の長年の慣れと慢心と、独りよがりで自称ベテランの顧問教諭らの判断ミスによって引き起こされた事故です。
雪崩の危険性の高い斜面に足を踏み入れ、8名もの死亡者を出した班を引率していた講師は、登山歴30年で海外の雪山登山の経験もある教員でした。
 
いくら経験があっても本職が教員である顧問教諭が登山を引率することには無理があります。その事実はこの事故によって証明されており、雪山に限ったことではなく、登山活動全般に言えることです。
さらに、本事故において登山経験がほとんどない新任教員が死亡してしまった点は、本答申の趣旨からも言っても重視すべき事実であるはずです。
◆現在も十分な安全措置がないまま登山が実施されている
このように生徒・教員の安全が確保されていないような状態であるにも係わらず、十分な安全措置もないまま高校部活動での登山活動が継続されています。
那須雪崩事故を引き起こした栃木県でも相変わらず経験と知識の乏しい顧問教員が登山の引率を強いられている状況に変化はなく、そのような状況の中、危険性の高い冬季の登山実施も許容されています。
再発防止として研修などの教員の負担を増加させる措置のみが取り沙汰され、根本的な対策もないまま惰性で登山が継続されている危険な状態が継続しています。
 
本答申の趣旨から逆行しているこのような状態を一刻も早く是正する必要性を強く感じています。
◆結言
上記のように安全が確保されていないような状態で、登山経験豊富な自称ベテランの教員や山岳関係者の声に押されて高校の山岳部・登山部の活動が那須雪崩事故の発生前と変わることなく継続されています。
 
部活動での登山活動は休止も含めて大幅に縮小すべきです。
もし、登山活動を継続実施するのだとしても、山岳ガイドなどのプロの帯同を必須とすべきです。顧問教諭は本当の意味での顧問に徹し、登山の引率や指導は山岳ガイドなどのプロを主体として教員の負担軽減と生徒・教員の安全確保を図るべきです。
 
山岳部・登山部を例として意見させていただきましたが、他のスポーツ競技であっても多かれ少なかれ同様の状態が散見される場合もあるかと思います。そのような競技は部活動での実施は相応しくなく、活動の縮小もしくは指導をプロの指導者の手に任せるべきです。
 
このメールで述べた意見は主に生徒・教員の安全確保の面から発している意見ですが、教員の働き方改革を実践する本答申の趣旨にも沿うものであると信じています。
今後本答申の精神が全国の教育機関に浸透し、教員の負担軽減と生徒・教員の安全確保の大きな助けとなることを期待いたします。
 
よろしくお願いいたします。 

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