那須雪崩事故で事故の検証委員会の委員を務められた長野県立高等学校の山岳部顧問教員が、登山計画の事前審査を受けずに同部の生徒を雪上の登山活動へ引率したとして、長野県教育委員会から口頭で注意を受けていたと報道がありました。
先日栃木県教育委員会から回答を頂いた3回目の質問書には、その報道に関する質問をいくつか盛り込んでいます。しかし、県教委からの回答はその質問の意図をはぐらかしたもので、事故防止から目をそむけ、まじめに対応する意思の感じられないものでした。
県教委への質問
県教委への質問は次のような内容です。
まず、事前審査を受けずに登山を実施した当日の山頂付近の様子をWEB上の記録から探し、長野県立高校の山岳部顧問が「秋山」と釈明した当日の山の状態が、20cmの積雪があった状態であったことを示しました。
その上で以下の質問をしています。
那須雪崩事故の検証委員会の委員であった●●先生が「秋山」と言われた2018年11月23日の燕岳は、栃木県教育委員会の定義された「積雪期」の定義に当てはめると、積雪期の状態にある山に該当しないのでしょうか。根拠も併せて回答ください。
那須雪崩事故の検証委員会の委員であった●●先生が「秋山」と言われた2018年11月23日の燕岳は、栃木県教育委員会の定義された「冬山」の定義に当てはめると「冬山」と判断されるのか否か、根拠も併せて回答ください。
【質問44ー6】で栃木県教育委員会が2018年11月23日の燕岳を「冬山」と判断されたのであれば、●●先生が「秋山」とされた判断との相違点を教えてください。
【質問44ー8】
●●先生のような部活動に熱心で、他の模範となるべき教員が指針を逸脱した行動をとっています。栃木県ではどのように教員に通知やガイドラインなどの規則を遵守させるつもりなのでしょうか。
栃木県教育委員会の回答
質問に対する栃木県教育委員会からの回答は以下の通りです。
御質問のもとになっている2019年1月17日下野新聞の記事についてですが、県教育委員会が長野県教育委員会に直接事実確認をしましたところ、「●●教諭が引率した11月23~24日の燕岳登山については、直ちに指針に抵触するものであったとは認識していない」とのことでした。また、「●●教諭に対し、懲戒処分指針等に相当する口頭注意をした事実もない」とのことでした。その他、長野県教育委員会が、取材した記者に対し、提供した情報の意図と記事の内容が異なる旨の電話を入れていることや、指針の対象とする冬山の解釈のわかりにくさがあったことから、今後指針の見直しを検討する方針であることも分かりました。
以上により、県教育員会は、今回の新聞記事につきまして、事実と異なっているものがあると認識しております。
なお、県教育委員会といたしましては、今回の燕岳の件に関する一連の質問事項について、長野県の高校が計画した登山のルートや実際の現地の状況等が不明であるため、判断することは困難ですが、本県においては降雪があった場合はガイドラインにも記載しているとおりその登山は中止といたします。
新聞記事では「口頭で注意した」とある表記を問題視し、「懲戒処分指針等に相当する口頭注意をした事実もない」としてそこから「県教育員会は、今回の新聞記事につきまして、事実と異なっているものがあると認識しております。」として一つ一つの質問に答えることなく全くまじめに回答していただけておりません。
なぜこのような態度なのでしょうか
新聞記事の表記はこのように「口頭で注意した」となっています。懲戒処分にあたる「口頭注意」であるとの記述は見当たりません。
これを「懲戒処分指針等に相当する口頭注意をした事実もない」とし、「今回の新聞記事につきまして、事実と異なっているものがあると認識しております」としてまじめに質問に取り合わない態度からは、事故防止を真剣に考えていると判断することはできません。
ずっと「冬山」や「積雪期」などというあいまいな言葉で規則を作ると、その言葉のあいまいさを突いてルールを逸脱した行為をする教員が出てくると訴えてきました。今回の記事は、正にそのあいまいさを突いたルールを逸脱した行為だと思います。
「口頭で注意」なのか懲戒処分にあたる「口頭注意」であるのかを問題にしているわけではありません。積雪20cmの状態の山を「秋山」だとしてルールを逸脱して審査もなく登山した教員がおり、その教員は那須雪崩事故の検証委員会の一員であったという事実に対して見解を求めたのです。
「口頭で注意」なのか「口頭注意」なのかとか言葉の揚げ足をとって事故防止から目をそむけるのではなく、事故防止に対して真摯に向き合って質問に回答し、真っ当なルールを策定していただくよう栃木県教育委員会には強く望みます。
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