遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

再発防止策に対する質問書 VIII.危機管理マニュアルについて

那須雪崩事故を受けて栃木県教育委員会が策定している再発防止策は不明な点が多く、未だに方針も実施状況も明らかになっていないものがほとんどです。内容の説明も、7月5日に開催された説明会で説明されたものが唯一です。

そのため、再発防止策の方針や実施状況を明らかにするために、遺族・被害者の会より質問書を提出して栃木県教育委員会とやり取りをしています。

質問の内容は「組織体制」や「説明会の開催」や「処分規定」についてなど、12項目にわたるものになっています。(12項目の内容はこちら
8月10日に1度目の質問書を、11月12日に2度目の質問書を教育委員会に提出いたしました。2度目の質問書は現在回答待ちの状態です。

回答は心無いものが多く、まだまだ再発防止策の意図を理解するには程遠いです。しかし、栃木県教育委員会の再発防止に対する考え方や意図がわかるまで質問を繰り返すつもりです。

そのやりとりの内容を項目ごとに何度かに分けて投稿させていただきます。

今回は「危機管理マニュアルについて」の質問とその回答のやり取りを投稿いたします。

検証委員会の提言の中に「登山に限らず全ての部活動に関わる危機管理マニュアルを作成し、専門家の助言等も得ながら機能するものに改善する。」とあります。それを受け、栃木県高校体育連盟は今年6月に、全35競技の事故防止策をまとめた危機管理マニュアルを作成しました。

回答から感じること

栃木県教育委員会は危機管理マニュアル作成を高体連に丸投げし、有効な監修や指導を実施していないことが明確になりました。
どの競技のマニュアルの中身を見ても専門家の意見の助言を受けた形跡がなく、大半は専門部のアマチュアの教員が独善的に作成していることがわかりました。

また、危機管理マニュアルと銘打ってあることからして真っ先に書くべき部活動や大会中止の基準が示されておらず、相変わらず現場の顧問教諭らに運営を丸投げしていることもわかります。

現時点ではただの大会運営マニュアルであり、早急の改訂が必要だと考えます。検証委員会の提言にあったから形式的にしょうがなく作成したという雰囲気を感じ取ることができます。
形式的で危機管理に対して実効性のないマニュアルを作成した結果、2018年の夏も熱中症で多数の生徒が搬送される事態に陥ったのだと考えます。

質問 VIII.危機管理マニュアルについて

質問-33 マニュアル作成の目的について

遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問-33】
県教委はこのマニュアル作成の目的はなんだとお考えでしょうか。このマニュアルがなかった現状は何が不足しており、何を補うために危機管理マニュアルを作成したとお考えでしょうか。
栃木県
教育委員会
重大事故を二度と繰り返すことがないよう、県高体連事務局、各競技専門部が、危機管理、安全管理の徹底を図っていくために作成されたものと認識しております。
遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
何度も事故を起こしている団体がまとめたマニュアルに実効性があるのか疑わしく感じます。単に専門の文献を複写したのみに等しく、経験や議論に基づいた生きたマニュアルだとは感じられません。
遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問33-1】
各競技に於いて、危機管理マニュアルに最低限記載すべき項目はなんであるとお考えでしょうか。
栃木県
教育委員会
県教委回答待ち
(2018.12.14回答要望)

質問-34 県教委の指導・助言について

遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問-34】
事業内容には県教委はマニュアルの監修と指導・助言を実施したと記載があります。危機管理マニュアルの作成・運営についてどのような指導と助言を行い、その助言はどのように内容に反映されていますか。
栃木県
教育委員会
危機管理マニュアルは、県高体連の調査研究委員会を中心に作成されたものです。県教委の職員も調査研究委員会の委員として、危機管理マニュアルの作成に参画し指導、助言をいたしました。
遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
質問-35にある通り、県教委は監修や指導を実施していないことを理解いたしました。

質問-35 県教委のマニュアルの監修について

遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問-35】
高体連の危機管理マニュアルには、栃木県教育委員会監修との記載がどこにも見当たりません。
問題があった場合に責任の所在が曖昧な高体連に責任を押し付け、自分たちの責任を回避しようとする意図を感じます。
なぜ記載がないのか教えてください。
栃木県
教育委員会
高体連危機管理マニュアルの「はじめに」の部分に、県教委の協力、元検証委員会委員長の戸田先生監修と記載があり、学校教育活動の一環としての部活動に係る事故については、県教委にも責任があることはこれまで述べてきたとおりです。
遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
栃木県教育委員会については「御協力いただいた栃木県教育委員会」として謝辞が述べられているだけで、「監修」や「指導」の記述もありません。
遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
事故が発生した場合の結果責任はあるものの、事故防止にかかわる危機管理マニュアルについては、栃木県教育委員会は監修も指導もしていないことを理解いたしました。

質問-36 専門家からの意見について

遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問-36】
マニュアルの内容は競技や安全対策の専門家の意見を聞くこともなく、教諭らだけで作成しているように見受けられます。どういった専門家に意見を聞かれたのでしょうか。また、県教委から今後専門家の意見を取り入れてマニュアルを改定するような指導をするつもりはあるでしょうか。
栃木県
教育委員会
高体連危機管理マニュアルについては、参考資料の記載があるように、多くの資料を参考に作成し、さらに元検証委員会委員長の戸田先生に監修していただいております。
栃木県
教育委員会
また、各競技専門部の重大事故に向けた安全対策、チェックリストについても、中央競技団体のマニュアル等を参考に作成されております。
栃木県
教育委員会
今後は、中央競技団体のマニュアルの改訂や参考資料のデータの更新等を注視するとともに、県高体連の危機管理委員会で大会実施の際の事例等を分析した上で見直しをしていくこととなると考えています。
遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問36-1】
各競技団体とは専門部のことでしょうか。中央競技団体とは全国高体連のことでしょうか。
ただのアマチュアである専門部の教員を専門家と認識されているということでしょうか。
栃木県
教育委員会
県教委回答待ち
(2018.12.14回答要望)
遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問36-2】
マニュアル中には雪崩事故防止の記述があります。どのような雪崩の専門家から話を聞き、参考とされたのか教えてください。
栃木県
教育委員会
県教委回答待ち
(2018.12.14回答要望)

質問-37 大会や部活動中の基準について

遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問-37】
大会や部活動中止を決定する基準を明確にすることが必要だと考えられます。標準的な基準を県教委から示し、通知する用意はありますか。ないのであれば、なぜ示さないのか理由を明示してください。
栃木県
教育委員会
競技ごとの、大会や運動部活動の中止の基準については、県高体連の危機管理委員会において、今後さらに検討を進めるよう指導して参ります。
遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問37-1】
大会や運動部活動中止の基準の検討について、検討結果が出る予定時期と、それを危機管理マニュアルに反映する予定時期をお知らせください。
また、検討結果について継続的にお知らせください。
栃木県
教育委員会
県教委回答待ち
(2018.12.14回答要望)

質問-38 2018年夏の熱中症発症の実績について

遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問-38】
記録的な暑さとなった今年の夏ですが、栃木県下の部活動では熱中症対策としてどのような施策を実施されたのでしょうか。対策内容と昨年と今年の部活動中や大会中の熱中症で倒れた生徒数、搬送された生徒数などの実績をお知らせください。
栃木県
教育委員会
熱中症事故の防止については、暑さ指数等を測定し、「熱中症予防のための運動指針」(( 公財) 日本スポーツ協会) 等を参考に、運動等の実施を判断するなど、適正に対応するよう県立学校を指導するとともに、市町教育委員会に対しても、同様の依頼をしております。
栃木県
教育委員会
今年度の熱中症が要因と思われる生徒の救急搬送の件数については以下のとおりです。
なお、昨年度については重篤な場合のみの報告を求めていたため、該当する事例はありませんでした( 本年度から症状の軽重にかかわらず救急搬送された案件については全て県教委に報告を求めております)。
栃木県
教育委員会
< 平成30年度熱中症が要因と思われる救急搬送件数>
【県立学校8 月27日現在】
部活動: 7件(10名) 学校行事: 2件(3名) 授業中: 3件(6名)、
授業以外: 2件(2名)
【学校体育団体】
中体連: 地区大会52件、県大会2件高体連: 0件
高野連: 21件( 選手2名、応援団19名)
遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問38-1】
事故に至らなかったヒヤリハット事例を積極的に収集する旨宣言されていたと記憶しています。
救急搬送されなかった事例は把握するつもりはないでしょうか。
栃木県
教育委員会
県教委回答待ち
(2018.12.14回答要望)

質問-39 大会関係者や部活動顧問に対する指導について

遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問-39】
無理な大会の運営や部活動で生徒が熱中症などの症状で搬送された場合、大会関係者や顧問に対してどのような処分・指導がなされるのか教えてください。また、再発防止はどのように運用されるのか教えてください。
栃木県
教育委員会
県教委では、無理な大会運営等が行われないよう学校や県中体連、県高体連に指導・助言しております。
万一事故が発生した場合は、事故の状況等を十分検討した上で、処分については必要に応じて判断されるものと考えています。
遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問39-1】
今年の夏での熱中症での生徒の搬送に至った事例において、顧問教諭の処分に至った事例をお知らせください。
栃木県
教育委員会
県教委回答待ち
(2018.12.14回答要望)
遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問39-2】
この猛暑下での熱中症の搬送事例は、顧問や大会主催者の安全軽視による必然です。故意に生徒らの生命を危機に晒しているにも関わらず、何ら処分されないのであればその理由を教えてください。
栃木県
教育委員会
県教委回答待ち
(2018.12.14回答要望)
遺族・被害者の会
遺族・被害者の会
【質問39-3】
今後搬送者を出さないために、どのように生徒らの安全を確保するつもりなのか方針を教えてください。
栃木県
教育委員会
県教委回答待ち
(2018.12.14回答要望)

回答に対する意見 VIII.危機管理マニュアルについて

マニュアル作成の丸投げでは

今回の回答から危機管理マニュアルについては高体連に作成を丸投げし、栃木県教育委員会から有効な監修や指導が実施されていないことが明確になりました。

中止すべき基準を明確にすべき

検証委員会の提言の中に「登山に限らず全ての部活動に関わる危機管理マニュアルを作成し、専門家の助言等も得ながら機能するものに改善する。」とあります。それを受け、栃木県高校体育連盟は今年6月に、全35競技の事故防止策をまとめた危機管理マニュアルを作成しました。

今回の事故では、当日に30cm以上の降雪があったにも関わらず講習会実施を強行して事故に至りました。この点を反省したならば、大会や講習を中止するための基準を明確にすることこそ、この危機管理マニュアルの存在意義だと考えます。しかし、作成された危機管理マニュアルでは大会を中止・延期するための基準については気象警報発令のみが記載されており、その他はすべて現場任せとなっています。

専門家の助言をしっかりと聞いてください

また、雪崩についての記載も稚拙で、熱中症対策も不十分です。専門家の助言を受けたとはとても思えません。現時点ではただの大会運営マニュアルであり、早急の改訂が必要だと考えます。

定量的な判断基準を

また、記録的な暑さとなった今年の夏、有効な熱中症対策もなく、栃木県下の学校において部活動で熱中症による救急搬送者が多数発生したことも回答からわかりました。死者が出なかったのは運がよかったからであり、今後数年以内に死者が発生したとしてもそうなるのは必然です。那須雪崩事故の7年前に発生した雪崩事故に酷似した状況にあると考えられます。

熱中症予防のため、酷暑日における大会中止の指標を定量的に示し、危機管理マニュアルに明確に記述するよう栃木県教育委員会から監修・指導していただくよう望みます。

また、熱中症だけに限らず、大会を中止するための指標を競技ごとに定量的に明確化し、本当に実効性のある危機管理に活かせるマニュアルとなるように監修・指導していただくようお願いいたします。

質問と回答のまとめ

再発防止策に対する質問書とその回答書
番号 質問書 回答書
1 2018.8.10提出
7月5日説明会への質問書
2018.9.20回答
「7月5日の説明会に対する質問書」に対する回答について
別紙 7月5日の説明会に対する質問書への回答(62項目)
2 2018.11.12提出
再質問書
再質問(別紙)
2018.12.14までの回答を要望中
栃木県教育委員会からの回答待ち

説明資料

再発防止策の説明資料
番号 説明会 説明資料
1 2018.7.5
再発防止説明会
資料1:
那須雪崩事故を教訓とした学校安全のための取組

資料2:
「那須雪崩事故を教訓とした学校安全のための取組」平成30(2018)年度進行(予定)表

資料3:
「那須雪崩事故を教訓とした学校安全のための取組」に掲げられた事業内容等について

全項目の質問まとめ

質問のやり取りの記録
番号 項目 質問
I. 再発防止策全般について 質問-1 再発防止策の考え方について
質問-2 部活動の在り方について
質問-3 マニュアルを守るための制度設計について
質問-4 専門家や父兄からの意見
質問-5 雪崩事故対策について
II. 再発防止策の説明会について 質問-6 これまで説明会を開催しなかった理由について
質問-7 遺族・被害者からの意見を聞かない理由について
質問-8 顧問教諭らへの説明について
質問-9 高校生徒らへの説明について
質問-10 父兄らへの説明
質問-11 今後の説明会実施の予定
質問-12 説明会が必要ない理由について
III. 県教委の組織体制について 作成中 近日投稿予定
IV. 高体連の組織体制について 作成中 近日投稿予定
V. 連絡協議会について 作成中 近日投稿予定
VI. 顧問の資質について 質問-24 5年の登山経験の根拠について
質問-25 顧問向けの講習会について
質問-26 教員のみでの引率について
質問-27 不足していた資質について
質問-28 各校顧問の登山経歴について
VII. 登山アドバイザーの派遣について 作成中 近日投稿予定
VIII. 危機管理マニュアルについて 質問-33 マニュアル作成の目的について
質問-34 県教委の指導・助言について
質問-35 県教委のマニュアルの監修について
質問-36 専門家からの意見について
質問-37 大会や部活動中の基準について
質問-38 2018年夏の熱中症発症の実績について
質問-39 大会関係者や部活動顧問に対する指導について
IX. 冬山登山の認識について 質問-40 冬季の登山実施の意義について
質問-41 「積雪期の認識」について
質問-42 冬季の登山の決定プロセスについて
質問-43 「積雪期」にある山の定義について
質問-44 冬季の登山の実施判断の基準について
X. 雪上での活動・訓練について 作成中 近日投稿予定
XI. 登山計画審査会について 作成中 近日投稿予定
XII. 処分規定の見直しについて 質問-58 処分規定見直しの進捗について
質問-59 処分規定見直しの論点について
質問-60 通知やルールを守るための制度設計について
質問-61 定年退職者への処分について
質問-62 処分量定の妥当性について

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