那須雪崩事故で引率していた男性教諭3人に対して業務上過失致死傷容疑で書類送検がなされたとの報道がありました。
東京新聞:那須雪崩 3教諭書類送検 「刑事責任明らかに」 遺族、一歩前進を評価
TBS NEWS:那須雪崩事故 教諭3人を書類送検、亡くなった生徒の自宅に卒業証書
毎日新聞:栃木・那須の雪崩 8人死亡 教諭3人書類送検 業過致死傷容疑
NHK NEWS WEB:高校生ら雪崩事故で教員書類送検
この件に対して遺族・被害者の会として遺族・被害者の意見を取りまとめ、発表する予定はありません。遺族・被害者それぞれ受け取り方は少しずつ異なるためです。
ですので、遺族の一人としてこの件に関して思いを述べさせていただきます。
捜査への感謝
書類送検によってこれからの捜査の主体が検察に移ります。
まず、書類送検に至るまでの警察の皆さまの捜査に感謝を伝えたいと思います。
現地での検分をはじめ、事故に関わった方への聞き取り、多方面にわたる捜査ありがとうございました。特に聞き取りに関しては現場にいた教員や関係者、私たち遺族・被害者のみならず、山岳や雪崩の専門家からも長時間に渡って調査していただいたことを耳にしており、多大な労力と熱意を傾けて頂けたことと思います。
先日、書類送検に至った経緯について捜査にあたった警察の方から直接説明を伺うことができました。詳しい内容をここで述べる訳にはいきませんが、そのお話からも警察の方々がこの事故の捜査に掛けた熱意が伝わってきました。
書類送検は警察のみなさまにとっては大きな区切りであると思います。
私たち遺族にとってはまだ通過点であるとの思いですが、それでもその事実を息子に報告することができました。
これまでの捜査ありがとうございました。そして引き続きよろしくお願いいたします。
今後の捜査・立件への期待
捜査は検察の手に移りました。
すでに一度宇都宮地検に伺い、要望は述べさせていただきましたが、安全確認を怠り、漫然と部活動を行い、生徒・教員の生命を危険に晒すことは罪であると捜査を通じて明言していただくことを望みます。今後の学校管理下での生徒・教員の安全に対して教訓となるような結果を残していただくよう期待いたします。
今回書類送検の対象となった教員に対しては、栃木県教育委員会より最大5か月の停職処分が下されています。しかしその停職処分はすでに明けており、対象となった教員は職場復帰されているそうです。
このままでは「安全確認を怠り、部活動で8名の命を失うような結果になったとしても、顧問教員たちは辞職することもなく元の職場に復帰することができた。」という結果だけが後世に伝えられます。
8名もの命が失われてこの結果なのですから、今後生徒・教員が一人や二人死んでも職を失うような事態にはならないといった誤った認識が広まり、学校管理下での生徒・教員の安全に対する緊張感が緩んでしまうことを憂慮しています。那須雪崩事故の結果によって学校現場の緊張感が緩み、子供たちの命がより危険に晒される事態になってしまったとしたら、息子たちの命は無駄となってしまうこととなるでしょう。
そのような結果は許容できません。
しっかりと起訴に至り、学校の安全に対する今後の教訓として残せるような結果となることを願います。
教訓を残していただきたい
「あれだけ雪が降ったんだから講習会を中止にすればよかったんだよ。」
事故の事実関係が大筋わかったころ、息子の声がそう聞こえた気がしました。
息子の言葉の通り、危険な場面ではしっかり足を止め活動を中止していただきたい、私の願いはそれだけです。
しかし今後、事故があった時と同じような危険な場面に遭遇したとしたら、引率する顧問の教員はきちんと足を止め、息子の言葉通り活動を中止することはできるでしょうか。さらに山岳部に限らず、例えば35℃を超えるような熱中症が懸念される気温で部活動や大会を中止することはできるでしょうか。
この先数年は、那須雪崩事故の記憶もあるでしょうから、危険な場面で顧問の教員はしっかりと足を止めてくれるかもしれません。しかし、事故の記憶が薄れる10年20年さらに50年先の顧問教員が足を止めてくれるでしょうか?私は疑問に思います。
事故の検証委員の一人であった長野県の山岳部の顧問教員が、先日積雪が20cmもある山を「秋山だった」として県が定めた指針に従わず審査もなしに雪上での登山活動を行い、口頭で注意を受けたという事実もあります。いくら立派な規則を作ったとしても、その規則を守らせるための制度や教訓がなければ顧問教員がその規則を守らないことはこれまでの事実で明確になっていると感じます。
教育委員会の停職処分だけでは後世に残るのは、「安全確認を怠り、部活動で8名の命を失うような結果になったとしても、顧問教員たちは辞職することもなく元の職場に復帰することができた。」という結果だけです。
それだけでは教訓とはならず、教育現場の安全に対する緊張感は緩み、50年先の顧問教員の足を止めることはできないと思います。
安全確認を怠り漫然と部活動を行い、生徒・教員の生命を危険に晒すことは罪であると明言していただきたいと願います。そして、今後の学校管理下での安全に対して教訓となるような結果を残していただくよう期待いたします。
その結果を基に、学校管理下での部活動や行事において生徒・教員の生命を危険に晒すような無理なことはしない、できない環境となることを望みます。そしてこの事故を契機に、部活動での生徒の安全がしっかりと守られるようになったと後世で語られる、そうなることを願っています。
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