遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

2017年3月27日に発生した那須雪崩事故の遺族・被害者の会のホームページです。

那須雪崩事故は死亡者8名、重軽傷者40名の学校管理下では最大級の事故でした。

那須雪崩事故について

当日の降雪に対する認識がおかしい

事故検証

事故の前日から当日にかけての現場近く旅館の降雪の様子です。先日公開いたしました検証委員会収集資料の中にある動画です。

夜半からかなりの降雪がありました。当日は30センチ以上の降雪があり、のちの検証によると3月としては19年に1度の大雪だったとのことです。
そんな天候であったにもかかわらず、顧問教諭らは「異常な天候とは認識していなかった」として雪上での訓練を強行し、事故発生に至りました。

降雪の記録

当日は事故現場から数km離れたアメダスで、34cmの積雪が確認されました。
事故発生時の気象条件は、前々日に気温が上昇し、当日は降雪とともに気温が低下していました。これは典型的な表層雪崩が起きやすい気象条件です。

事故発生時の気温と積雪量(第1回検証委員会資料8より)

以下は国土交通省作成の資料から転記した表層雪崩が発生しやすい気象条件を示した図です。上図の事故時の気象条件と比較すると表層雪崩が起きやすい気象条件であることが容易にわかります。

 

表層雪崩が発生しやすい気象条件(国土交通省砂防部保安課作成資料より)

事故当日の朝

 事故当日の朝は平地でも降雪がありました。平地にある家の周りでも朝起きると道路の端にうっすらと雪が積もっていたように記憶しています。

 3月も終わろうとしているのに雪が降るなんて異常な天気だ、息子は大丈夫だろうか、テントがつぶれたり寒い思いをしていないかと心配した記憶があります。平地でも雪が降っている異常な天候だったので、当然講習は打ち切ってすぐに帰ってくるだろうと思っていました。

当日は平日の月曜でしたが、たまたま会社が休みだったので、迎えに行く必要があるかな、せっかくの休日がこれでつぶれるかなとのん気に違う心配もしていました。

想像もしなかった事態

そういった思いでしたので、この雪の中訓練を実施しているとは考えていませんでした。
当日複数の学校の生徒が雪崩に巻き込まれたと聞いて、撤収準備をしていたテント場にまで押し寄せる巨大な雪崩が発生したとしか考えられませんでした。

報道でラッセル訓練中に雪崩に遭遇したと聞いて「こんな天候で講習を続行していたのか」と驚きましたが、それでもスキー場ふもとのロッジ付近で訓練をしていて、そんなところまで雪崩が押し寄せたのだと考えていました。

事故は異常な天候と想像もできなかった巨大な雪崩のためで、万全の安全確認をしていたとしても防ぎようのなかったものだと自分を納得させ、感情を押し殺すことに必死だったのだと思います。

実際は訓練実施を判断しただけでなく、スキー場の中で訓練を実施しただけもでなく、スキー場を抜け樹林帯に入り、さらに樹林帯も抜けて危険な斜面に立ち入っていました。この悪天候の中、そんなことをしているなんて想像もつきませんでした。

事故は想像もできなかった顧問教諭らの判断によって引き起こされました。

事故発生は必然

当日は30センチ以上の降雪があり、3月としては19年に1度の大雪だったとのことです。3月の下旬としてはさらにあり得ないくらいの異常な天候だったことでしょう。講習会があったその日にそのような悪天候になったことは運が悪かったと言う人がいらっしゃるかもしれません。
しかし、私は当日が異常な天候だったからといって運が悪かったとは思いません。台風が来ている時に海水浴を強行し、沖に出て溺れたとしても誰も運が悪かったとは言わないでしょう。同じことです。

事故の検証が進むにつれ登山専門部の今までのいい加減な対応が明るみになり、ヒヤリハットの引継ぎもなく、ロクな安全確認もないまま何年も講習会や登山活動が続けられていることがわかりました。
事故の7年前の2010年にも同じ講習会で同じような雪崩事故が発生しています。これも死者が出なかったのは運が良かっただけです。

繰り返し同様の事故が発生していることからも事故の発生は必然であったと思われます。

運が悪く事故が発生したのではなく、いつか事故が発生することは必然で、むしろ今までこの講習会に参加して生き残った生徒らの運がよかったのだと思います。

しかし、栃木県教育委員会はそうはとらえていないように感じます。

この1年あまり見てきたいい加減な対応や再発防止策からは「事故が発生したのは運が悪かったため。たまたまこんな悪天候になったから事故が発生しただけで、対策は必要ない。」という彼らの思いが伝わってきます。

顧問教諭らの降雪に対する認識

19年に一度の異常な天候であったにもかかわらず講習会は実施されました。
一体なにがあれば講習会は中止されたのでしょうか。何があってもどんな天候であっても講習会は強行されていたのではないでしょうか。

なぜこのような異常な天候の中で講習会実施を判断できたのか、事故の説明会の場で顧問の教諭らに問いかけました。

驚くことにその答えは「異常な天候とは認識していなかった」というものでした。

「現場近くは15cmぐらいの積雪で、そのくらいの積雪は山間部ではよくあることで、特別な天候とは思わなかった」とのことでした。

当日参加したどの教諭に問いかけても口裏を合わせたように「降雪量は15cmぐらいだった」と言われ、困惑した記憶があります。どの教諭からも10cmでも20cmでも30cmでもなく、降雪量は15cmだったと言われました。その口調は少しでも罪を軽くするために、降雪量はそれほどでもなかったと主張しているように感じられるようなものでした。

現場から数km離れた気象観測所では34cmもの降雪が記録されてはいましたが、現地の降雪量は正確にはわかりません。生徒らからは30cmぐらいの降雪とのコメントもありましたが、事故現場付近では実際のところはそこまでの降雪だけではなかったのではないか、検証委員会ではそんな雰囲気になりました。

そういった雰囲気の中、検証委員会で冒頭にある降雪の様子を写した監視カメラ映像がプロジェクタで流されました。映像から30cmぐらいの降雪があったことは明白でした。

「これで15cmってことはないね。」この映像が流された後、検証委員から漏れ出た言葉が忘れられません。

天候の確認

顧問教諭らの天候の確認方法は、スマホの天気予報で確認するのみでした。しかも意思決定に関与した顧問教諭の一人はバッテリーを温存するためずっとスマホのスイッチを切っており、当日の天気予報を確認していなかった(※)とのことです。そういったこともあり、平地でも降雪があるような異常な気象であることに気づかなかったと言われました。

(※)当初「しかも当日はバッテリーが切れていて確認できなかった」と記載していましたが、記憶違いでしたので訂正いたします。

本来天候の変化に目を光らせていなければならない山岳部顧問が、講習会開催実施の判断をする責任者が、異常な天候であることを認識していませんでした。
平地にいる素人の私たちでさえ異常な天候であることを認識していたにもかかわらず。

私のそれまでの山岳関係者に対する印象は、常に天気図を凝視し、天候の変化には敏感に反応して行動を決定している登山家の集まりだと思っていました。
それがこんないい加減な確認のみで済ませているなんて信じられませんでした。平地にいた素人の私たちの方が、この天候の異常さを把握できていただけマシということです。

本当に異常な天候であることを認識していなかったのかどうかは教諭ら本人にしかわかりません。罪を軽くするためにそう言い張っているだけかもしれません。
しかし、安全確認をいい加減に済ませ、いい加減な判断をしていたことは確かです。
こんないい加減な人たちに、こんないい加減な組織に息子を預けていたことに気づかされ、愕然としたことを憶えています。


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