遺族は納得していません。 通知が守られず事故が発生したこと、それが問題視されていないこと、そこに対策がないまま再発防止策が作られること。

平行線は交わらない

昨日9月28日、栃木県教育委員会に対し、賠償に関する申し入れを実施し、その後再発防止策について意見交換をいたしました。
今まで遺族の意見を聞いてもらうような場は設けられておらず、県教委の意思も確認できたという意味では意見交換は大変有意義なものでした。
しかし、その結果浮き彫りになったのは、県教委の何も変えようとしない頑なな姿勢でした。

報道

那須雪崩、遺族弁護団が損害賠償の具体額提示 栃木県教委に再発防止策申し入れ(産経ニュース)
部活動登山、根幹から再議論を 遺族、県教委に要望 /栃木(毎日新聞)
再発防止策に批判相次ぐ 弁護団と栃木県教委が意見交換(下野新聞)

意見交換

意見交換は短時間でしたので、議題を絞りました。

「引率教員の要件」「登山アドバイザーの派遣について」「冬山登山の認識について」「教員に対する周知方法、制度設計について」を議題として挙げましたが、時間がなく登山アドバイザーについては触れることもできず、他の議題についても意見交換に留まりました。

冬山登山について県教委の方針では「積雪期にない低山に限って冬季に登山を実施する」となっています。定義があいまいで、例外を許容して遺族の感情を逆なでするような「積雪期」や「低山」などという表現を用いてまで冬山登山を実施しようとする県教委の姿勢に疑問を持っています。
それほどまでに冬山登山実施にこだわっているので、そんな要望が学校や父兄からあるのかと訊くと、「要望は聞いていない。過去の実績があるため許容することとした」との回答でした。
誰からも要望もないのになぜ冬季の登山を実施しなければならないのか、答えはありませんでした。

また、冬山登山に限らず再発防止策や登山活動そのものについても生徒や父兄から意見を聞いたかと尋ねると、全く意見を聞いておらず、今後も聞くつもりもないことがわかりました。

冬山登山を部活動の中で実施する必要があるのか、そもそも夏山も含めて部活動で登山を実施する必要があるのか、教員を講習漬けにするだけで引率することができるのか、そういった根本の議論は全くなされた様子もなく、父兄や生徒の意見に耳を傾ける気もないことがわかりました。

一体誰のために、どこを向いて対策を行おうとしているのか、全く理解することができません。

何も変えずに今まで通りに部活動を実施しようとするその姿勢からは事故の反省を感じることができず、事故の鎮静化を図るために再発防止策を利用しようとしている姿勢が浮き彫りになったと思います。

意見交換はずっと平行線のままで、議論が噛み合うことすらありませんでした。
この平行線はいつまでも交わらない予感がします。

引率教員の要件

議題のひとつとして引率教員の要件についても意見交換いたしました。

8名もの死者を出した1班講師の顧問教諭は、登山第2種指導員(現在は失効)、公認山岳B級スポーツ指導員(現在は失効)の資格を取得し、国立登山研修所の研修も複数受講しています。登山歴は33年にも及び、冬山登山の経験も豊富で、検証委員会の報告書では述べられておりませんが海外の冬山での登山経験があることも確認できております。

それに対して引率教員の要件は、登山指導経験5年以上と所定の研修を受講することとされています。
少なくとも一人要件を満たす教員が引率者に含まれれば、顧問教諭だけで、登山アドバイザーの帯同なしで登山を引率できると判断されています。

事故を起こした教員は、失効はしていたものの指導資格を取得しており、登山研修所の研修も受講しており、海外登山も含めて経験も豊富で、本業が教師である山岳部顧問としては比較的力量があります。引率教員の要件を満たすだけの力量はあると思われます。

このような経験豊富な「ベテラン」と呼ばれる教員が事故を起こしているにも関わらず、5年以上の登山指導歴があればよしとする要件に疑問を持ち、どのように決めたのか問い質しました。

その答えは驚くことに「昔からそう決まっているから」というものでした。
その昔どうやって決めたかも問い質しましたが答えはありませんでした。

何かしら決めた根拠が語られると期待していましたが、昔から決まっている以上の根拠はなにもなく、議論することすらできませんでした。
栃木県教育委員会では何事においても思考が停止しており、しっかりとした議論や根拠がないまま再発防止が進められていることを強く感じます。

8人もの命を奪ったその重大性を認識されているのでしょうか。

顧問の資質

1班講師であった顧問教諭の力量は充分であったのか否か、不足であったならなにが足りなかったのか、国立登山研修所などで受講した講習や研修の内容が適切であったのか否か、そういった点を明らかにしてこそ引率教員の要件は明確になるはずです。

栃木県教育委員会の中ではそういった点は全く議論されていないことが、今回の意見交換で明らかになりました。

また、那須雪崩事故検証員会の報告書でも顧問の資質については十分に議論されていません。検証委員会の報告書では、資格が失効していたことのみがクローズアップされ、「高校登山部顧問の技術研修そのものの停滞」といった点のみが問題として挙げられ、顧問教諭らの力量や資質については触れられていません。問題の本質をすり替えられたような印象を受けます。

そういった議論がないまま「登山指導経験5年以上」「スポーツ協会認定指導資格を有するか県が指定した研修等に参加」といった要件が定められ、要件を満たせば教員のみでの登山の引率が許容されています。

これらの要件には何も根拠がありません。これも今回の意見交換で明らかになりました。

顧問教諭に必要な資質や講習が論ぜられていないこの状況であるならば、高校山岳部の登山活動において経験や講習受講の有無にかかわらず顧問教諭だけでの引率は許容すべきではないと考えます。


コメント

  1. AAA より:

    「積雪期にない低山に限って冬季に登山を実施する」

    いつまで言葉遊びをしているのでしょうか?
    何度も書いてますが、冬山、春山、積雪期、残雪期等々の単語で何かの基準を設けるのは不可能です。
    分けるとすれば、雪山(雪のある山全般)か、雪のない山の2択だけです。
    ※夏の雪渓等については要検討。

    厳冬期なみの気象条件だったにかかわらず、「春山」で「講習」だからという意味不明な理由で那須雪崩事故は起こったのではないでしょうか?
    ご遺族もまず、「冬山」という単語を使わないことをお勧めします。

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