誰のための登山専門部、誰のための山岳部なのか
海外登山に行くために2か月近くも仕事を休むことのできる職場なぞ、どこを見渡しても栃木県の高校山岳部顧問ぐらいしかあり得ません。ほかでこのような挑戦をしたいならば、プロの登山家になるか、クビを覚悟で会社を休んで個人で出かけるしかありません。
そのような登山専門部の海外登山に、菅又教諭はどのようなツテがあったのか大学生のころから参加していました。そこに参加している顧問教諭らの姿を見て趣味の登山活動に没頭するために教員の職を選んだとみられても仕方のない状況だと思います。
また、登山専門部は山岳関係の団体に人材を輩出するための場としても利用されています。
現栃木県山岳連盟の会長の石澤好文氏は、もともと高校教員で、登山専門部の専門委員長を務められた方です。また、1990年の海外登山で登山隊長を務められた渡辺雄二氏も当時教員でしたが、2010.4~2015.3の間、国立登山研修所の所長を務められました。
このように登山専門部は顧問教諭と山岳関係者のための組織となっている、そう思わざるを得ません。顧問の趣味の幅を広げるための組織、山岳関連団体に人材を供給するための組織となっており、生徒のため、部活動のための組織という風にはとても見えません。
登山専門部や山岳部を、生徒をそっちのけで自分たち山岳部顧問が登山を楽しむための場として活用していたのではないでしょうか。
そしてなお、那須雪崩事故を受けて栃木県教育委員会が策定した再発防止策では、顧問教諭に数々の研修を受けさせ、相変わらず教員が主導権を持って生徒を引率することとなっています。それは伝統的に登山専門部が顧問教諭らを教育し、山岳の関係団体に人材を供給する場になっていたからではないでしょうか。この再発防止策は、その仕組みを今後も変えるつもりがないという栃木県教育委員会と登山専門部の意思の表れだと考えられます。
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